シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

回路 煌Side

 煌Side
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床に出来た穴から下を覗けば、

何処からどう見ても…火の粉散らす溶岩の谷。


よく映画にあるだろ、CG合成した…あの主人公達を震え上がらせ、ピンチに陥れるような赤い光景。


指先で触れば、直ぐに骨になり、その骨さえも瞬時に蕩けて無くなりそうな…そんな溶岩だ。

怒り狂って我忘れた緋狭姉や、金翅鳥(ガルーダ)の放つ炎攻撃といい勝負。

この部屋がサイコロのように回転したにしろ、普通に垂直落下したにしろ…そんな猛威な溶岩の中に位置していなかったのが奇跡的なんだ。


その中に、小猿に…飛び込めと笑う櫂。


櫂が狂っちまったと思った。

案の定、小猿は蒼白な顔でガタガタ震え出す。


いくら櫂の強さに影響受けて、己を変える決心をした処で…その櫂から死の宣告を出されたようなもので。

櫂の見立て通りじゃなければ、俺達が引き上げてやると言われても…これはちょっと…なあ…?


「櫂…。視覚矯正の為に、小猿がこの部屋の外に出て…実は、その視覚は真実でした…なんて洒落にならないぞ、おい!!!」


恐怖のダメージが、小猿を襲うだろう。


ガタガタ小猿は、暫し使い物にならない。

こいつ…結構小心者だから。


「煌…。俺の言うこと、信用出来ないか?」


櫂は苦笑する。


「信用するさ、櫂だから。けどさ…小猿には無理だ。上手く行ったとしても…ショックが強い…。小猿、お前やってみるか?」


小猿はぶんぶんと首を左右に振った。


「ほら。他の方法ねえのかよ?」


すると櫂が静かに言った。


「翠の潜在能力は大きい。それが開花されていないのは…偏(ひとえ)に、"出来ない"という先入観。固定観念。

翠はまず、自分自身の力を信じていない」


そう言い切ったんだ。

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