シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「此処は…明治神宮…の参道脇の小道か?」
葉の枯れた木々。
生彩を失った冬の光景だけれど…
「正解や、櫂はん」
聖が笑った。
「2ヶ月前を思い出す。そうか。白皇はこの道で…元老院と"約束の地(カナン)"を繋いでいたのか」
2ヶ月前。
元老院と五皇が揃っていた明治神宮に、俺達全員は正装にて"謁見"した。
五皇は影武者が多く使われていたらしく、実際…本当の五皇が誰なのかよく判らねえけれど。
ああ、此処が何処かなんてどうでもいい。
必要なのは、この場所の名称ではなく…此処が外界だということで。
外界に櫂が居るということで。
漆黒色に彩られた櫂に、後光のように陽光が降り注ぐ。
なんて静かな…神聖なる漆黒色。
まるで光に祝福されているような闇色の幼馴染。
それを見て…それが感慨深くて…
俺は泣きそうになった。
ほんの数日前、櫂は此の世から消えていた。
久遠の力がなければ、もう二度と櫂は外界の地に立つことは出来なかった。
俺と一緒に…同じ地に立つことは出来なかった。
それが、今一緒に居る。
一緒に生きて居る。
「…ぐすっ…ぐすっ…」
「何で…小猿が泣くよ…ぐすっ…」
「だって…なんか感動的で。横須賀のこと思い出したら余計…ぐすすっ…」
「猿と犬が泣くなよ…ボクまで貰い泣きしちゃったじゃないか。…ぐすっ。折角我慢してたのに…ぐすっ…ああ、鼻だらだらだ。ずぴぃぃぃぃっ…」
「遠坂…お前…何で俺の服で鼻かむよ…ぐすっ…。おい小猿、お前まで…ぐすっ…ああ、ガピガピになるじゃねえか…ぐすっ。あ、俺も鼻…」
「は!!!? 何でウチの服で鼻かむねん!!!」
「がははははは!!!」