シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「煌。お前だって…偃月刀、直ぐに大きく出来たか?」
「いいや…」
「そうだろう? やろう、出来ると思って初めて、出来たはずだ。偃月刀による風の力も。刀の潜在能力を引き出したのは、周囲の力ではなく…お前の意志の力によるものじゃないか?」
俺は、がしがしと頭を掻いた。
確かに…そうだ。
今となったら、出来るものを…あの時は、"俺は出来ない、馬鹿だから"それだけで、ただおたおたしていた気がする。
出来ることが判れば、今は自由自在だ。
「で、でも!!! それはワンコが凄いからであって!!! 紫堂櫂が強いから簡単に言うけどさ!!」
「お前も凄いじゃないか、翠?」
櫂が、翠と同じ目線に体を屈める。
「お前に凄いと思って貰えるのは光栄だが、俺達は、皆…最初から凄かったわけじゃない。皆…0からスタートだ。皆頑張って今に至る。
お前は…尊敬する"兄上"の血を引き、今は亡き"御前"の息子だということも判明している。俺のように…出生があやしいわけではない」
「だけど俺…血筋がよくても落ちこぼれで、勉強してもちんぷんかんぷんだし、ずっと遊び呆けてきたし…。それが祟って、俺…直系次男なのに、皆が出来ること出来ないし…」
「落ちこぼれ上等じゃないか」
櫂が声をたてて笑った。
何だか凄く…親近感覚えるような笑みで。
「その、落ちこぼれで遊び呆けてきたお前が、どうして大八位という位階をとるに至った?」
「……。兄上の役に…立ちたくて…」
小猿が項垂れた。
「役に立ちたいと思うその意思1つで、大八位までの力を手に出来た。それは朱貴ではなく、お前自身の力。それだけの根性と集中力があって…お前が凄くないわけないだろう?」
小猿は黙り込んでしまった。
こいつ…当初は、自分のことを凄い奴だと自慢していたけれど、今ではきっと井の中の蛙だということを知ったんだろう。
櫂にかかれば、小猿の"凄い"も並程度。
ただ俺達は判っている。
小猿の潜在能力は未知数。
貫通化の力も強化すれば、久涅に匹敵出来る。
…はずだ。
小猿はダイヤの原石。
磨けば…輝くと思う。
輝けば、見事立派な大猿になる。
……多分。