シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「まず、自分自身を信じることから始めろ。自分で可能性を狭めるな。自分を信じられなければ…いつまでたっても強くなど変われやしない。苦境を乗り切る"勇気"が生まれてこない」
「…クマ…。青春真っ盛りの若者達が、ええ話しとるな」
「おおう。おじさん達は目の奥が熱くなってきたな」
「なんで"達"? 年とってるのはクマだけやろ?」
「おいおい、年齢は大した変わらないだろう?」
「何言うとりまんねん!!! テライケメンは、年齢不詳と決まっとるんやないか!!! ひーちゃんプンプンや」
………。
「うるせえ、黙れ、オヤジ共!!!」
俺は騒ぐ大人達を睨み付けた。
「くすん…ひーちゃん永遠の16歳…」
「そいつは無理無理、がははははは!!!」
櫂は無視を決め込んだらしく、続けた。
「自分自身を信じなければ…俺の言葉も信じられない。煌の言葉も信じられない。いつまで立っても殻から出てこれない。平行線だ。
翠――。
やってみろ、飛び込んでみろ」
暫しの沈黙を経て…
小猿は顔を上げた。
「俺、やってみるよ」
藍鉄色の瞳には、いつにない強い光を宿して。
強張ったようにも思える小猿の顔は、きりりとしている。
「そうか」
櫂はふわりと微笑んで、藍鉄色の頭に手を置いた。
「櫂…」
「ん?」
「お前…小学校のセンコー似合っているんじゃねえか?」
思わずそう言えば、
「俺は中3だよ、小学生じゃないんだよ!!!」
俺の前では、やはり小猿はいつも通りの小猿。
キーキー騒いで飛び跳ねる。
何だか…小猿に成長して欲しい反面、今まで通りでいて貰いてえんだ。
成長しても、小猿のままでいて貰いたい。
そう思う俺は…
小猿の成長の妨げとなるんだろうか。