シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


多分俺なら、いじいじうじうじ。

何処までも玲にやつあたりして縁すら切って…もしかする激昂のあまり、芹霞を襲っていたかもしれねえ。

折角朱貴から、無償の愛というものを教えて貰っても、それすら忘却しはて、力で芹霞を抑えつけ、自分の愛をただひたすら訴えてぶつけていた気がするんだ。


理性なんてねえ、本能の赴くままに。


どうして玲?

どうして俺の心は届かない?


自分のしでかした罪すらも棚に上げ、ただひたすら…病的に芹霞を求めただろう。

暴走して、色々なものを再生不可能までに破壊して、周囲も自分も…破滅させていっただろうと思う。


破滅とは停滞。


俺はきっと、悪循環な…嫉妬という輪に縛られていたはずだ。

未来に展望なんてありはしねえ。



だからこそ今――

俺には、櫂が必要だ。


櫂といることで、自分を制御出来る。

守るという使命感が、嫌な記憶を上塗りしてくれる。


そうだ。

櫂の存在が、俺を制御してくれるんだ。


俺には過ぎた幼馴染の存在が、俺の救いだ。


桜には悪いけれど…


俺――

櫂と居れたことに感謝してる。


なあ…桜。

俺もまた、心を鍛えてえんだよ。


愛に盲目になることで、

周りが見えねえ自分になりたくねえ。


誰も危険にさらしたくねえんだ。


櫂と共に、俺だって強くなりてえんだ。


愛は滅ぼすものではなく――

俺にとっても、

強くなる為の、創生の力にさせてえんだよ。


無二なる力として、

体の隅々まで循環させてえんだ。



玲…。


俺もお前が好きだ。

お前を救いたい。


だけど櫂同様…

俺だって芹霞が好きなんだ。


だから――


もがかせろ。

あがかせろ。


お前が罪悪感を感じているのは判っている。


ならば――

俺達の反撃を受けるのを、罰としろ。


追いかけられる立場で、

それでも芹霞を手に入れられるのか。


それでも芹霞はお前を選ぶのか。


俺は…

強くなるから。


< 153 / 1,366 >

この作品をシェア

pagetop