シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
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「じ、じゃ…行くよ?」


床にぺたんと全身俯せになった小猿が、恐る恐る…といった口調で俺達に言った。


「おう!!! 気合い入れて行けよ!!!」

「頑張れよ!!!」


俺と櫂の激励に、


「……う、うん」


返事だけで小猿は動かず。


……ん?


「じ、じゃあ…本当に行くよ?」


また、震える声がして。


「おう、気合い一発ッッ!!!」

「頑張れ」


「………」


……ん?


小猿が動かねえ。


いや、動いてはいるようだ。


カタカタカタ…。


震撼する…蒼白な顔色の小猿。


恐がり蒼白小猿は、頭で行く決心をしても、体が言うことをきかない状態らしい。


カタカタカタ…。


哀れ小猿め…。


「なあ…櫂。どうして穴から降りるんじゃなく、小猿の壁抜けの力を使うんだ?」

「その穴自体、本当に"その場所"に開いているのか怪しいからな」


俺と櫂は小猿の横に屈んで、ぼそぼそ話し込む。


「その場所って何だ? 安全なのか?」

「多分…」


櫂…。

多分で、恐がり小猿を派遣させるのか?


「い、行くよ!!? 今度こそ本当に…」


だが小猿は、口ばかりで動かない。


軽い溜息をついた櫂は、


「…翠の力に頼ろうと思ったけど、翠がどうしても一歩踏み出せないというのなら。少々…手荒に」


顔に、意地悪い笑みを浮かべて。


風の力で、ふわりと翠を浮き上がらせると…


「え? え!!? ええええええ!!!!?」


穴に翠を放り込んだんだ。



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