シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


不可解な密室からの脱出ではなく、自由な空間が如何に現実として"認識"出来るか…。

それが問題だったらしい、アホハットのテスト。


密室だから出れないのではなく、見えないから出られなかったというだけで。

見えないままでいれば、ずっとずっと出れなかったというだけで。

単純明快な…だけど複雑怪奇なこの空間。


ああ…くそっ。

俺1人だったら、出られてねえや。

俺は今更のように自分の頭の悪さを嘆き、がしがしと頭を掻いた。



「そや、皆はん」


アホハットが、懐から何やら小さい機械を取出して見せてくる。


「これは皆はん用の、ひーちゃん印iPhoneや。人数分ありま。これはあくまでひーちゃん印よって、特殊な作りしてま。ひーちゃんはひーちゃんのものありま。これ…皆はんにご褒美に渡すさかい、遊んで下はれ」


「いらん」


櫂が警戒に満ちたような顔で拒めば、少しだけアホハットは焦ったような気がした。


「なんや櫂はん…流行に乗り遅れまっせ?」

「流行なんていらん」

「ストレス発散に…"ツイッター"なるもの風に、皆はんのアカウントを用意しましたんや。ひーちゃん印の"ついった"や。さささ、呟きなはれ」

「必要ない。またどうせ…誰かに送るつもりなんだろう」


櫂は詰るような眼差しを向けると、ぷいと横を向いてしまった。


「櫂はん…実はこれ、ひーちゃんの持つものの機能制限版なんや。外部からのものを受信は出来ますが、送信は出来ないんや。ほれ、この設定機能見て下され。全て無効になってるますやろ? 無効ボタンそのものがグレーになって弄れまへんのや。ひーちゃん印の"ついった"は、個々の機体に留まるただのテキスト機能なんや。情報漏洩はありえまへん」

櫂は画面を覘いていたが、


「信用できん」

腕組みをして、ぷいと横を向いた。

あいつ…何で不機嫌なんだ?

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