シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「勿論、ワンワンはんが弄っても爆発しない作りになってま。試しに少し弄ってみなはれ。そうそう、そこをそうやったら、"ついった"が開き、ここをこうやってこうすれば文字が…」
「すげえ、俺でも出来る!!! なんか玲になったみたいだ!!!」
「俺…iPhoneみたいな画面触って動かせる機械、やってみたかったんだよ!!! え、俺も試させてくれるの!!? うわ、うあああ…!!!」
更に俺達は大感激!!
まず第一に、指で動くことに大興奮だ。
「櫂はん…お供の犬と猿が悦びはってるんなら、やはり飼い主はんとしては面倒みなあかん。な?」
その時の俺は、含んだ笑いをするアホハットに気づかず、ただ目をきらきらさせて、櫂を見つめていた。
小猿と一緒に。
「櫂、俺が触れても大丈夫な機械なんだ」
「紫堂櫂、俺がやってみたかった機械なんだ」
じり…。
俺達が一歩踏み出せば、引き攣った顔をした櫂が一歩後退するが、構わず俺達は一歩前に進む。
じり…。
「櫂…」
「紫堂櫂…」
じり…。
「「やりたい~」」
じり…。
「…判った。判ったから、顔をそんなに近くに近づけるな!!!」
気づけば俺達、櫂に至近距離。
櫂は何故か赤い顔。
「と、とりあえず…寄越せ。俺が先に検分するから」
櫂は溜息をつくと、iPhoneを弄り始めた。
――そして数分。
警戒心に満ち、そして渋々といった櫂の声が聞こえてくる。
「これは本当に、この"ついった"から書いた本人アカウント以外からは、自分が書いた内容が判らないんだな? 外部には非公開なんだな?」
やけに非公開に拘る櫂。
セキュリティーがなんだかんだ…玲がよく使うような単語まで出して、質問攻め。
最初は自信満々に答えていたアホハットも、最後の方は櫂にたじたじの様子で。
「そ、そや…。最初に選択したアカウント以外の人間は…な、何をしても…じ、自分以外は見ることは出来まへんし…さ、ささ…先刻(さっき)、パスワード設定したやろ? 対外的なセ…セキュリティ…は、ば、ば、"ばっちぐ~"や。
ほ、ほら見てみぃ? か、櫂はん…ワンワンはんのだって、ウチのだって、翠はんのだって…み、見れないやろ? 何をしても。
…ホンマやろな(…ぼそっ)?」
「……情報屋。何でどもりながら話す。最後…何で疑問系なんだ?」
「た、たまにはそういうこともあるんや!!! ひーちゃん、男の子の日やさかい!!! 櫂はんも男やら、判るやろ~」
「俺には、そんな日はない!!!」