シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「なあアホハット。結局俺達は、どこから此処に入ってきたんだ?」
「ああ、ワンワンはん。この草毟り取るか、あの雲吹き飛ばすかすれば…出てきますやろ。此の世界は…入った時点で、世界が構築されるさかいに…」
入った時点で…構築される世界?
「情報屋。お前…結界以外にも力があるのか?」
翠が俺の服の裾を引いて、俺に言った。
「紫堂櫂。こいつは陰陽道の"籠目の陣"も作れるし、記憶繋ぎ合せて…。合わせて…。………。…なんちゃら。あと…。………。…なんちゃら」
なんちゃら?
「ああそうだ、櫂。アホハットは、確か木場で…。………。なんちゃら」
煌まで"なんちゃら"だ。
地団駄を踏んだのは情報屋。
「翠はん、ワンワンはん。何で肝心なトコ忘れるんや!! "なんちゃら"ちゃう!!! ほら…思い出しなはれ!! ほら…夢…」
思い出されないことが恨めしかったらしい情報屋が、恐らく過去、この2人に口にしたのだろう言葉を紡ぎ始めた時。
『案内(ガイド)違反です。
グリーンカード1枚』
事務的な…女の声がしたんだ。
「何だ、今の声!!?」
騒ぐ煌と翠の前で、
「あっちゃあ…貰ってしもた~」
情報屋は、自分のiPhoneを見て、酷く項垂れた。
どうやら今の声も、あの機械から流れたらしい。
「おうアホハット。何だ、グリーンカードって」
「そういう定義(ルール)なんや…。あと2枚食らったら、罰則(ペナルティ)や…ぶるぶる。はあ…仕事とはいえ、よく聞き逃さずにちゃんと聞いてはりますなあ…」
………。
「外部接続はないと言ったじゃないか!!!」
「うわ、櫂はん!! 首絞めなはるな~!!! ひ、ひーちゃんのは出来ますねん。櫂はんお持ちの方は、特別製につき出来まへんのや!! 櫂はんの機械からは、何も送信出来まへんのや~」
俺は不機嫌な顔で手を離して、呟いた。
罰則(ペナルティ)とされた言葉。
「夢……?」
俺の脳裏には、先程翠に説明した夢についての会話が再現される。
疑似…感覚、か。
夢もまた…。
………。
『ピンポンパンポーン♪』
突然の音に思わずびくついてしまった。
今度は何だ?
チャイムの音?