シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
そして…爆破された"約束の地(カナン)"。
正直、あそこまでの規模魔大爆発が起こるとは、オレは予想していなかった。
後で駆け付けた久遠も含め、各々が結界を施し…それを包むようにして赤い…炎の結界に覆われながら、何とか生き残れたのは奇跡。
――緋狭さんの言葉を信じよう。"五皇は、五皇が支配する力の種において…意識の有無関係なく、その攻撃に見合う防御が可能だ"と。
緋狭姉担いで魔方陣へ走っていた時、櫂はそう言った。
防御…というより反射(カウンター)に近い緋狭姉の力。
爆発が大きすぎた故に、俺達を守る結界も大きく強かった。
緋狭姉…何処まで化け物じみてるんだよ。
緋狭姉は命が尽きぬ限り、無敵だ。
昔も今も…緋狭姉様々だ。
魔方陣の上という…爆破の中心部に居て、震動でより地下に沈んだ俺達は、実際の…表層状にある"約束の地(カナン)"の惨状は確認せず、地下を歩いてきたんだ。
長時間埋もれていたその道は、道脇に処処に生える…妙に生彩放つ緑の雑草が、現況に違和感与えながらも、現実と連携(リンク)した唯一の産物だということを示し、俺達に生きて進む希望を繋いだ。
地上における"約束の地(カナン)"の様相はどうなんだろう。
黒い塔はどうなったのか…。
何1つ把握することが出来ないまま、あの胡散臭い氷皇が用意した道を、外界に続くものだと信じて歩き続けてきた…それだけが俺達の現実であり真実であり。
――あははははは~。
決して気分はいいものではねえけれど。
それでも。
緋狭姉は肉体を犠牲にして、俺達を救ったんだ。
久遠は命とも言える土地を犠牲にして、俺達を逃がし…緋狭姉を守ってくれてる。
多くの犠牲で成り立った…俺達の"生"の道。
それは櫂はよく判っているはずで。
それでも歩まねばならないことも判っているはずで。
櫂は毅然と歩き出す一方で、何度も立ち止まっては…後を振り返っていたんだ。
憂いの含んだ目で、唇を噛みしめて。