シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


そして…爆破された"約束の地(カナン)"。

正直、あそこまでの規模魔大爆発が起こるとは、オレは予想していなかった。


後で駆け付けた久遠も含め、各々が結界を施し…それを包むようにして赤い…炎の結界に覆われながら、何とか生き残れたのは奇跡。


――緋狭さんの言葉を信じよう。"五皇は、五皇が支配する力の種において…意識の有無関係なく、その攻撃に見合う防御が可能だ"と。


緋狭姉担いで魔方陣へ走っていた時、櫂はそう言った。


防御…というより反射(カウンター)に近い緋狭姉の力。


爆発が大きすぎた故に、俺達を守る結界も大きく強かった。


緋狭姉…何処まで化け物じみてるんだよ。

緋狭姉は命が尽きぬ限り、無敵だ。

昔も今も…緋狭姉様々だ。


魔方陣の上という…爆破の中心部に居て、震動でより地下に沈んだ俺達は、実際の…表層状にある"約束の地(カナン)"の惨状は確認せず、地下を歩いてきたんだ。


長時間埋もれていたその道は、道脇に処処に生える…妙に生彩放つ緑の雑草が、現況に違和感与えながらも、現実と連携(リンク)した唯一の産物だということを示し、俺達に生きて進む希望を繋いだ。


地上における"約束の地(カナン)"の様相はどうなんだろう。

黒い塔はどうなったのか…。


何1つ把握することが出来ないまま、あの胡散臭い氷皇が用意した道を、外界に続くものだと信じて歩き続けてきた…それだけが俺達の現実であり真実であり。


――あははははは~。


決して気分はいいものではねえけれど。


それでも。

緋狭姉は肉体を犠牲にして、俺達を救ったんだ。

久遠は命とも言える土地を犠牲にして、俺達を逃がし…緋狭姉を守ってくれてる。


多くの犠牲で成り立った…俺達の"生"の道。


それは櫂はよく判っているはずで。

それでも歩まねばならないことも判っているはずで。


櫂は毅然と歩き出す一方で、何度も立ち止まっては…後を振り返っていたんだ。


憂いの含んだ目で、唇を噛みしめて。
< 17 / 1,366 >

この作品をシェア

pagetop