シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
『時間です。第二ステージに移動して下さい。あと2分42秒で始まります』
「おお、そんな時間かいな!!!」
またもや女の声に、返事をしたのは情報屋。
手にしたのは情報屋専用iPhone。
「相変わらず…時間に細かいな…二宮ちゃんは」
「二宮?」
思わず訊けば、独り言だと誤魔化された。
その時、クマが神妙な顔で考え込んでいるのに気づいた煌が声を掛ければ。
「いや…車から流れた音声ガイドも、同じ声だった気がしてな?」
何の話か、判らない。
「とにかく急がなあかん!!!」
訳も判らず急かされるまま、情報屋についていく俺達。
草原を駆け抜ける。
気持ちいい。
そう思っていたら――
「は!!!!?」
気づけば、景色は…切り立った崖となる。
俺達が走っていたのは崖の縁。
「何で突然草原が崖になるよ!!!!?」
俺達の気持ちを代弁したように、煌の声が響き渡った。
「ワンワンはん、早う早う!!!」
そんなことはどうでもいいというように、情報屋はとにかく焦っていて。
とりあえず…走った。
『第二ステージスタート』
そんな声と共に――
目の前に拡がったのは、三つ叉の分岐点。
一本道が突如3つに分かれた。
そして嫌な予感がして、振り返った後ろの道は…無かったんだ。
俺達が走ってきた道が、消失している。
…いつの間にか。
そう、全てが"いつの間にか"…引き返せない"舞台"が組み立て終わっている。
………。
上等だ。
目が合った煌も、にやりと笑っている。
何があろうとも…恐れるものか。
聖の案内中は、まだ裏世界の入口だというのなら、こんな場所…さっさと突破して、目的地まで行き着きたいんだ。
三叉路…各道の地面に突き刺さるのは、古ぼけた木札。
書かれてあるのは…縦書き筆字。
木札に直接ではなく、何故か上質な書き初め用半紙に描かれている達筆な楷書体。
真新しい立て札だということは明確だ。
左の道にあるのは――
『攻撃を禁ず』
真ん中の道にあるのは――
『防御を禁ず』
そして右側にあるのは…。
「「「………」」」
何度見ても、書かれてあるのは…。
俺達は顔を見合わせ…煌が吼えた。
「『○○』って何だよ!!!」
そう、書かれていたのは…
『○○を禁ず』