シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


カラーコードを持ち出された時点で、軽く予想はついていた。

暗示されている5色は現職五皇。

うち白皇は居ないけれど。


赤→慈悲

黒→無効

緑→変化

白→知恵

青→孤高



「これは…なんだろう」


芹霞がこてんと頭を片側に傾けた。


「五皇の特質…じゃないかな」


「特質…?」


「ん…。五皇は全てにおいてずば抜けた人達だけれど、その中でも特に優れたものが…色の持つ意味に合致しているんじゃないかな。

つまりはその特質を踏襲して、五皇が入れ替わってきた。一応の定義(ルール)みたいな枠。

それにそぐわぬ者は五皇にはなれない」


「紅皇サンって…"慈悲"なんだ?」


正しくそうだと思う。


僕は…僕達は――

緋狭さんの慈愛深さにずっと救われ続けてきた。


それが緋狭さんの特質であれ、紅皇の特質であれ…

緋狭さんの慈悲の心は、氷皇は持ち得ないものだ。


緋狭さんは慈悲の紅皇に相応しい。

僕にはそう思えるから。


「"約束の地(カナン)"の白皇…」


僕は独白のように続ける。


「その特質が"知恵"…つまり叡智とするなら、確かに魔術師としての彼の知識は、かなりのものだろうね。

ドルイドとしての資質と、グノーシス教寄りの怪しげな秘密結社に培われてきた…魔術知識。錬金術すら成功させていたなら、金と欲…そして不老不死に目が眩む輩にとっては、どうにかして手に入れたい知識だ。

錬金術だって、元はといえば金を生み出す術ではなく…不老不死を目的とした賢者の石を創り出すことが最終目的だからね。

そうした欲深い輩…元老院にとっても、レグという存在は知識の宝庫。レグが知恵の白皇職に据えられてたとしても何ら不思議はない」


「そのレグの後継に見込まれた久遠は、結構なものなんだねえ」


由香ちゃんが驚嘆の声を出し、僕は頷いた。


「全ての知識を叩き込みたかったろうね、レグは。だけど幸か不幸か…久遠は素質があっても、やる気がなかった。ある程度のものは吸収したにせよ、彼にとっては…弟と共に"生きる"為の最低手段の範疇でしか知識を必要とせず、それ以上を求めなかった。

久遠さえやる気になって上を目指していたならば…レグ以上の白皇が誕生していたかも知れないね」


「残念だね…久遠。本当のふさふさの王様になれたのに」


芹霞が哀れんだ目をしていた。


久遠はきっと――

芹霞が白皇になれと言ったのなら、どんなに悪態ついても白皇になるような気がする。


要はやる気。


受入れる器は出来ているのだから。

そういう点では、煌と似通っている。

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