シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「欲しいものがあるのなら、我武者羅になる力を持て。それは多分…肩書きあるお前を甘えさせる表世界ではなく、汚れた裏世界にあるのだと…俺は思う」
小猿はただじっと櫂を見つめていて。
「翠。俺も0から出直しだ。肩書きも前提も、矜持も…心の拠り所とした女まで無くなった。だけど幸い、俺には仲間が残っている。しかし…その仲間まであっちもこっちも窮地に陥っている。
今の俺には、全員を救う力がない。
だから俺は、裏世界に行く。
醜くも情けなくも、必死に足掻いて…少しでも強くなり、少しでも情報を得て、皆を…1人残らず守る為に。皆を…呼び寄せるために。
それが、今の俺の希望だ」
小猿が…何故か俺の服をぎゅっと掴んだ。
「だから…お前も強くなれ。
強くなろうとする精神を養え。
嫌なことから逃げるな。
変えて見せる根性を出せ。
何の為に強くなりたいのか。
どうすれば強くなれるのか。
必死に藻掻いて考えろ。
その為に…お前には荒療治が必要だ」
そして櫂は笑った。
「俺は――…
無くしたものは…必ず奪い返す。
時間などかけものか。
最短で…奪還する。
やられたままで諦めてたまるものか。
俺は…落ちぶれたままでは終わらない」
ぞくりとする程、美しい…強い笑みに、長年見慣れている俺でさえ、引き込まれる。
こいつなら有言実行してくれる。
こいつなら安心して任せてられる。
「その為の危険など…恐れるに足りない」
櫂とは…そんな男なんだ。