シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「うわ…何これ。目がチカチカするんだけど」
芹霞が目を擦っている。
左軸は惑星記号が12個12段。その中にはドラゴンヘッドやドラゴンテイルのマークもある。
上軸は規則性のない、0から始まる数字4桁。
これが3列と、目覚まし時計のマーク、家のマーク記号…合わせて5列から成り立っている。
そしてそれが交わる各升目には、星座マークと数字1桁ないし2桁の数字、更にはその右に"R"と書かれているものもある。
「また…暗号?」
芹霞がげっそりとした声を出した。
今度は何を送り付けてきたんだろうか。
今度は"褒美"と称して何をやらせられるんだろうか。
ロクなものじゃないと思うけれど。
その時僕は、その表の…枠外が汚れていることに気付き、袖口で画面の汚れを拭き取ろうとしたが、とれない。
「これ…汚れじゃない?」
もしかしてと思い、その部分を画面上で拡大してみれば。
何度も何度も拡大してようやく見えたものは。
"HAPPY Barth Day
(^з^)-☆Chu!!"
………。
「誰か今日誕生日の人いた?」
「ボクは違うよ」
「私も違います」
「玲くんは…違うよね。1月生まれだし」
………。
そう考えて、再度上軸の数字を見れば…。
!!!!!
「判ったよ、この4桁の数字は誕生日だ!! この"0121"は僕、"0720"は芹霞」
「玲くん、じゃあこの"0309"って? 確か桜ちゃんは9月だし…由香ちゃん?」
「違うよ。ボクは12月」
僕は静かに言った。
「それは…櫂の誕生日だ」
「紫堂くん…の?」
毎年毎年、君は櫂の誕生日を盛大に祝っていたんだよ?
とっても嬉しそうな顔をしてね…。
その記憶を奪ったのは僕。
心が痛くて堪らない。
そんな僕を察したか、桜が言った。
「上軸が誕生日で、左軸が惑星の…このデータは一体何でしょうね?」
「占星術(ホロスコープ)の画像のDLと同じ並びにあったということは…これ、占星術(ホロスコープ)の基礎データになる…天文暦じゃないかな。星座もついてるしね」
僕は苦笑交じりに答えた。
「師匠、天文暦って何だい?」
「その日、太陽から見てその惑星がどの角度にあるのか示したものだよ」
「この"R"は何でしょうか」
「うーん、惑星の動きと考えたら…"Retrograde motion"、逆行のことじゃないかな。惑星は、西から東に動く"順行"と、東から西に動く"逆行"の動きがあるからね」