シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
♪慟哭の薔薇 私の心に血の雨を降らせて
貴方なしじゃもう生きていけないの~
サビで俺と櫂の声が重なって。
場所は遠く離れていても…櫂が身近に感じて、何だか凄く嬉しくなった。
「翠も歌え!!!」
「うぬぬぬぬ~ッッ!!!」
♪lalala~
開き直って歌いだした小猿もこの曲を知っているのか…高めの旋律が重なる。
ほう…小猿は歌は上手かったらしい。
高音域専門らしいけれど。
澄んだ声が、俺と櫂の主旋律に…突然変異のような"色"を与える。
かつて歌った俺と櫂の歌というよりは…
今限定の…小猿と俺と櫂との歌。
「翠、なかなかいいじゃないか!!!」
櫂が褒めると、単純小猿の喜んだ声が返る。
「この曲テレビのCMでかかってて、俺好きだったから覚えてたんだ。けど、やっぱこっちのアレンジの方が、曲、全然格好いいじゃんッッ!!」
何だ、あいつ意外と余裕?
オニ緋狭姉が速度上げたのに、かわして移動しながら歌っている。
「ここに玲と桜がいれば…完璧だったな」
主旋律を俺と櫂が代わる代わる歌い…
小猿がコーラスのようにハモって。
あ…曲が終わる…。
「ニノ、ずっとリピート!!!」
『お答えします。畏まりました、櫂様』
まだまだ歌う気らしい。
やがてアレンジバージョンの歌詞を覚えた小猿も、歌詞つきで参戦。
呪文みてえのは覚えられねえくせに、歌の歌詞は覚えちまう小猿。
あいつ…リズム感いいんだな、猿の本能か?
才能の無駄遣い?
全く…不思議な猿だ。
そして――妙なことに気づく。
間奏になった時、俺は櫂に大声で聞いた。
「櫂…緋狭姉の速度、落ちたか!!!?」
「え? ワンコの方も!!? 実はこっちも…」
櫂は声をたてて笑った。
「いや、決して遅くはなっていないんだろうよ。俺達が…リズムを取ることが出来始めたんだ」
「リズム?」
そういえば。
俺の移動。
緋狭姉をよけるタイミング。
これは――
♪慟哭の薔薇 貴方の心に血の花を咲かせて
愛してる愛してる愛してる~
このリズムに…体が慣れてきた?
リズムの通りに…体が動いている?