シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「く~!!! 師匠もさ、ふとした仕草は可愛いのに、時折攻めモード混ぜて変則技で畳み込んでくるからな。変なトコロげほげほしたり照れるのに、どうして平然とあんなこと言える……って、今、何か音しなかったか?」
「ゆ、由香ひゃん…由香ひゃん落とひらiPhone、あらひ何処か触っら…」
芹霞さんが、鼻を押さえたティッシュをつっぺに切替ながら訴える。
そして、芹霞さんが触ったというiPhoneを遠坂由香が拾った時。
「「「「………」」」」
私達は押し黙った。
皆、思ったに違いない。
今…画面に何か見えた気がしたのを、見なかったことにしておいた方がいいと。
そう、白昼夢でも見てしまったことにしようと。
「「「「………」」」」
沈黙を打ち破ったのは、芹霞さんで。
「ねえ…"ついった"って何?」
夢ではなかったらしい。
「神崎!!! どうして言葉にしちゃうんだい!! いかにも第二ステージです、みたいな怪しげなものの存在を受け入れちゃったら、ボク達の負けだぞ!!?」
遠坂由香の中には既に勝負事になっていたらしいが…気持ちは判らなくもない。
しかし一度言葉にされれば気になってくる。
"ひーちゃん印のついった"って何なんだろう?
名称だけでは何も判るはずがなく。
判らないのに、胡散臭さだけがぷんぷんで。
警戒心だけが強まっている。
「多分…"Twitter(ツイッター)"のことだと思う」
遠坂由香は判ったらしい。
私は芹霞さんと顔を見合わせ、互いに首を傾げた。
私達にはそれがどんなものなのか判らない。
「140文字以内の"ツイート(tweet)" と呼ばれる"つぶやき"を投稿するものさ。リアルタイムで情報が流れるから便利っちゃあ便利だけど、誰にでも見られちゃうから、良し悪しだよね~。まあ…非公開の手もあるんだけれど」
「こひんろーほーもろばれなんら」
"個人情報モロバレなんだ"
「だけど友達作りにはいいよ? 趣味仲間がすぐ見つかるからね。見つけたらフォローしちゃえば、その人たちの呟きはいつでも見れちゃうんだ。逆に他からフォローされたら、フォロワー。相手の承認必要ないから、やっぱ良し悪しだよな~」
「由香さんはされていたんですか、ツイッター?」
「昔はね。同じ趣味の子見つけてむふむふしてたけど…今は必要性がある時以外はしてないよ。師匠の弟子である以上、情報流失にも気を付けてるし。そこは師匠にきっちり言われているからね」
そうだったらしい。