シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「どうだった? "恋人達の聖地(メッカ)"は。君もずっと行きたがって…宮原に聞いて回ってたよね」
「……凄かった。とにかく…あたしは世間様というものを知らない、小娘だった…」
私は…煌を追いかけてS.S.Aに入ったけれど、その時、人間は…あのライブ会場の者達しか知らないから、実際…どんな者達が集う場所だったのか知らない。
"恋人達の聖地(メッカ)"?
凄いとは…どう凄かったんだろう。
あれこれ思う私の顔を覗き込んでいた、遠坂由香。
「S.S.Aは、神崎みたいなアンポンタンを荒療治するにはいい場所なのさ」
治療場所???
医療施設???
「…君達はS.S.Aに染まらなかったのかい?」
「え? あんなには…!!! まあ…玲くんが、べたべた&ちゅっちゅ&とろりになった程度…って何ばらしてるの、あたし~ッッッ!!!」
照れたように頬を赤く染める芹霞さん。
「忘れて忘れて~ッッ!!! 何でもないの~ッッ!!!」
遠坂由香は、うひょひょひょとおかしな声を出して、ぱんぱんと自分の両手を叩いて喜んだ。
その目は三日月目のままで。
「師匠が煽られたのか!!! 判っていて煽られたのか、どうしようもなく煽られたのか微妙だけれど。むふふふふ!! 師匠、よかったな!!! それで吹っ切ってお色気担当に鞍替えしたのかもしれないな!!!」
何を言っているのか判らない。
玲様は…お色気担当だと初めて知った。
元々色気はある方だが…今、その色気は確かに凄まじく、芹霞さんを"病気"にさせてしまうことをしているけれど。
弾けた起因がS.S.Aになるのだとしたら、S.S.Aで何をしていたんだろう?
「つ、次進もうよ、次!!! ええと…」
依然真っ赤な顔の芹霞さん。
そうした顔は…まるで玲様に恋しているような少女のようで。
………。
私はおかしい。
玲様には幸せになって欲しいし玲様の恋を邪魔したくないと思うのに、玲様の元で赤くなる芹霞さんを見ていると、ちくりちくりと心に針で刺されたような痛みを感じるんだ。