シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「葉山物知りだな!!!」

「今回の"サンドリオン"について調べた時、玲様がグリム童話の名前ではそれであると教えて頂きまして…」


玲くんは、人に誇れる博学の持ち主だ。

あたしは昔覚えた、忘れてもいいようなどうでもいい雑学を披露する。


「Zodiacデビューにあたり、その名前は覚えにくいからと、所属プロダクションにバンド名を変えられたらしいんだ。結構何かにつけて、プロダクション意向が反映していたはずだよ? 例えば…ギターもね、」


言いながら更に深く思う。

本当にどうでもよすぎる情報だ。

どうしてあたしの脳味噌は、こんなことしか覚えられないんだろう?

だから虚しくなってきて、早々に切り上げてしまった。


「だったら、意味はないのかなあ。Zodiacもさ…今回の件、変にかかわっているんだよね。実際"約束の地(カナン)"においても、Zodiac登場の代わりのスクリーンが増殖したり、その向こうに"何か"が居たり…」

「何かって…何が居たの、由香ちゃん!!」


あたしそんな怪談、聞いてなかった。


「それはよく判らない。紫堂と久遠が撃退したらしいけどさ」


スクリーンの向こう側って…。

あたしは思わず桜ちゃんを見た。

すると桜ちゃんも同じことを思っていたのか頷いて。


「S.S.Aにおいて、玲様が出てこられたのもスクリーン。S.S.Aでは…Zodiacのライブが行われていたんでしたっけ」


そう考えれば…芸能人であたしとは無縁の存在だったのに、今は間接的にかかわりあっている気もする。


「ライブするくらいなら、学園祭のゲリラライブに意気消沈せず、今もご健在で何よりだろうけど…一層自警団の取締りが厳しいこの東京で、よくそんな華々しいことこと出来るよな」

「一層、厳しいの? 自警団」

「ああ。情報屋と此処にくる時も酷かったぞ。前以上にまるで我が物顔だ。道には自警団しか歩いていない感じ。

その中を……本当にあの情報屋何者かね。あんなチャラチャラしているのに、自警団は例の携帯取り出して照合みたいのしたら、勝手に去っていくんだよ」


何者なんだろう、あの金髪のエセ関西人。

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