シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
同じ英単語の羅列だった。
それは0と1ではなく――
まるで呪いの産物でも見ているかのように。
「『ERROR』…え!!!?」
由香ちゃんは声を上げた。
そう。
"ERROR"の文字ばかりが、延々と繰り返されているんだ。
今も尚――。
「師匠が作ったものが、何でERRORになるんだよ!!? そういえば…"約束の地(カナン)"の時もおかしかった。同じ現象か!!?」
本当のプログラムエラーという意味なのかは判らないけれど。
由香ちゃんが慌ててパソコンを弄って確かめている限りにおいては、実際にパソコンに異常(エラー)が見られるらしい。
音と小さな画面にて、由香ちゃんにメッセージを伝えている。
「ああ、くそっ!!! やっぱ続行不可能だ!! 師匠じゃないと!!!」
「ウイルス…ですか?」
「判らないけど…ウイルスであったら、師匠が作ったものに対して外部的接触があり、師匠がそれに競り負けたということだ。ありえないよ。師匠が直々に力でプログラムしていたものを!! ハード的な障害抱えているのかなあ…」
カタカタカタ…。
由香ちゃんがキーボードを叩く音が聞こえる。
パツン…。
突然、何かが飛んだような音がして。
例えるならば、ブレーカーが落ちたような音。
「停電か!? パソコンの電源が落ちた!!!」
「紫堂全体らしいです。部屋の明かりもつきません」
突然過ぎるこの事象を目にして、頭に過ぎったのは――
「桜ちゃん…もしかして玲くんが…」
「"気"は感じます。依然…乱れてはいますが」
無事であるのならいくらかは安心する。
何となく…玲くんの危機を、電気が訴えているような気がしたんだ。
玲くんが愛を注ぐ0と1が、玲くんを助けて欲しいと。
玲くん…今、どんな状況でいるの?
大丈夫? ねえ…心配で見に行きたいよ。
そんな時だった。
バタバタバタ…。
バタバタバタ…。
室外で…複数の人間が走る音がしたのは。
今までシンと静まり返っていたのに、今度は極端な騒がしさ。
気配が掴めないあたしでも、耳に入る音で人の存在は感知できる。
まるで…集団がこの家にお帰りになったかのような騒ぎだ。
「電気が消えたから?」
それにしては凄い慌てぶり。
居るのが子供だけとか、夜に電気が落ちたというならまだしも、明るい昼間に電気が落ちたのだから、冷静に対処できそうな気がするのだけれど。