シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「何だろう…クオン…唸りだしたけど…」
するりと、あたしの首から床に降り立ったクオンは、ドアの奥に向って威嚇を始めたんだ。
まさしく、"フギーッッ"だ。
何かが…あるのは確かなんだろう。
だとすれば、早く玲くんの無事な顔を見たいし、合流したい。
「桜ちゃん。あたしと桜ちゃん、どっちが玲くんの様子見てくるのが、玲くんにとっても桜ちゃんにとってもカドたたないのかなあ」
あたしは聞いてみた。
「当主に呼ばれていると判っていて玲くんを探しに行くのだとすれば、桜ちゃんが行く方が何か言われちゃう? それとも…次期当主の警護団長だからで理由通りやすい?」
「だけど玲様からも言われていますし、紫堂に紛れ込んでいるのが、黒い薔薇の痣の…男以外もいるかどうかも確認とれていない危険の中、残していくわけには…」
「だけどあたし、自分のことより玲くんのことが心配だ!!! 無事だったらいいんだけれど、もしも無事じゃなかったら!!!」
「だったら皆で行こうよ!!!」
由香ちゃんが手を叩いた。
「皆でこの屋敷を思い切り動き回れるいい口実、ボク思いついたんだ!!!」
そして由香ちゃんは破顔する。
「クオンを使おうよ!!!」
すると今までフギーフギー言っていたクオンが、くるりとこちらを向き、
「ニャア」
得意げに…珍しく素直に返事した。
理解…しているのかなあ…。
◇◇◇
《Upper World 002》