シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
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防御を禁ず。
守りが出来ない状況とは、どんなものなんだろうか。
またとんでもないゲームでも繰り広げられるんだろうか。
何で裏世界に通じるのが、ゲーム形式なんだろう。
色々と考えながら、また切り立った崖道を走っていく。
「あいつ…1人で大丈夫かな…。けどあいつを信じなきゃな。そして俺とお前でこっち終わらせて、小猿の処に行こうぜ!!!」
心配ではないわけではない。
手を差し延べたい気持ちは多々ある。
差し延べるのは簡単。
だがそのタイミングを間違えれば…翠はずっと他人に依存してしまう。
それだけはさせたくない。
昔の俺のように、誰かが何かをしてくれるまで待たないといけないような…情けない男にはなって欲しくはないんだ。
「あ…今度は早く崖が終わったな。あ? 何だこのドア。っていうかこのドア…まさか…? まあいい、開けるぞ」
そして広がる光景は――
「やっぱ……神崎家…」
そう。芹霞と煌の家の…玄関。
そこから見える風景は、俺達の記憶と寸分の狂いもなく。
「また"模倣"、か」
"約束の地(カナン)"のあのショッピング街もそうだが…何でこんなに刻銘に再現出来るのだろうか。
例えば玄関先の靴とてそうだ。
――ああ、お気に入りのローファーの先、擦れて白くなっちゃった…。これ高かったのに…。
焦げ茶の芹霞の靴先は…そんな傷痕もついている。
更には幼い頃、俺が玄関ですっ転んで、引っ掻いて傷つけた下駄箱の傷も、きちんと健在している。
「リアルだな…俺、ただいまって言いそうになる」
煌が苦笑した。
「そしたらいつもみたいに芹霞が"お帰り"って…」
その時だ。
「あ、煌、お帰り。あ、櫂も来たの?」
中から…芹霞が出て来たんだ。
桐夏の制服に白いエプロンをつけ、手におたまを持って。