シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
僕は、芹霞が好きなんだ。
好きだからこそ、手にいれようとした僕は、櫂の心を大きく傷つけた。
櫂を傷つけ、光の差さない暗い裏世界に追いやって。
櫂の寛大さと優しさをいいことに、僕はそれでも芹霞を手放せない。
浅ましく醜く…それでも僕は芹霞が欲しくて堪らない。
僕自身を愛して貰いたい。
僕を必要とされたい。
誰にも奪われたくない。
芹霞に生まれたほんのちょっとの小さな芽を、大切に育て上げ僕の愛情を注ぎこんで…大きな綺麗な花を咲かせたいんだ。
ずっとずっと…愛でて活けて、僕だから任せられると…皆に祝福されたいんだ。
そこまで求愛してる僕は、今更引けない。
引きたいとも思わない。
引く気があれば、とうに引いている。
今までのように。
僕は…この想いを貫くために、戦う。
正々堂々と。
僕は…雄黄を見て言った。
「拒否します」
と。
そんな僕を見て、
くつくつ、くつくつ。
蔑んでいるように喉元で笑い始める。
雄黄だけではなく、当主までも。
「愚かしいな、玲。
お前は…本当に愛を勝ち取った気でいるのか?」
当主の言葉に、僕の心が軋んだ音をたてた。
「自惚れるのも大概にしろ。
お前が手に入れたと思っているのは、"ままごと"。
恋愛の真似事だ」
僕の心に突き刺す言葉。
その毒に、僕の心は蝕んでいく。
「童貞でもあるまいに、今更…そんな娘に操をたてて何だという?
たかが1度…何故我慢が出来ぬ…。
痛みを感じることなく、悦楽を感じればいいだけだ」
「子供は…愛の結晶だ。
愛のない子供なんて…僕は作りたくないッ!!!」
すると当主は笑った。
「お前に…愛の結晶など誰も求めておらぬ。
欲しいのは遺伝子、それだけだ。
出来たものは子供だと思わねばいい。
見せることすらするつもりはない。
ただの…道具だ。
お前よりも…遙かに利用価値のある、な」
蝕まれた僕の心が、闇に染まっていく。
僕は…何?
僕の子供は何?
「愛などなくても子はなせる」
「愛がなければ子は生まれない!!」
僕は即座に反論する。
「では…お前はどうだ?
親の愛を感じ取れたのか?」
僕は返答に窮して。
だけど――
「僕は両親とは違う。
愛なくして、僕は絶対子供など作らないッッ!!
出来るはずがないッッ!!」
すると、当主はこれ以上ないというくらいに高笑いをした。
「お前が愛など感じなくても、子供は出来たではないか。
道具にもならぬ…失敗作だったけどな…」