シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
どくん。
"子供は出来た"
"失敗作"
深追いするなと本能は警鐘を鳴らし続けるけれど、それでも聞かずにはいられない。
どうしても聞かねばならない気がする。
「どういう…意味ですか」
心ならずも唇を戦慄(わなな)かせる僕に、当主は実にゆったりと笑いながら、何人かの女の名前を口にした。
「聞き覚えがあろう?
お前が過去…"愛してきた"女達だ」
何で…当主が、僕の恋愛遍歴を把握してるんだ?
どくん。
凄く…嫌な予感がして。
「お前の気を引きたくて、駆け引きに失敗した愚かな女達。
その女達は…今、どうしてると…?」
「どうしてるって…別に普通に…」
何故か、僕の手が小刻みに震えて…血の気をなくした。
「連絡を絶ち、完全に終わった別れたものと、女に完全に興味を失っているお前が、女達の"その後"を気にして確かめたことがあるか?」
ない。
ないけれど…。
「考えてみろ。あんなにお前に執着していた女達が、こぞって…」
――好きな人が出来たの。だから別れて。
「お前に手の平を返せる理由を。
女はしたたかだ。お前を試した結果が失敗に終わり、それで泣いて諦めすごすごと身を引くかと思うか?」
相手がさよならを望んだから、僕は別れた。
至って円満に、愛の代わりに、感謝を込めて僕は微笑んで。
誰もが僕を引き止めなかった。
引き止めても僕は振り返らなかっただろうけれど。
「女達に復縁できる勝算があったから、だとしたら? お前を…自分に縛り付けることができる…。
例えば…女しか持ちえぬ武器」
「え……?」
どくん。
――お前が愛など感じなくても、子供は出来たではないか。
――道具にもならぬ…失敗作だったけどな…。
「僕は…彼女達を妊娠させたりは!!!」
例え求められた事に対して応じていても。
例え…子供が出来ない可能性が0%でないにしても。
全員が全員なんて…おかしいじゃないか。
「ああ、優等生のお前は"失敗"などしておらぬ。
失敗したのは、女達の"器"だ」
僕は目を細めた。