シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「後で"入れられた"お前の遺伝子に、心も身体も耐えられなかった。最期は狂死。因果なことよ、お前こそが"狂い"の元凶か」
どくん。
"狂い"
"最期"
どくん。
――呪われてしまえッッあははははは!!!
耳に聞こえるのは母親の狂笑。
咽喉が渇く。
「彼女達に…一体何を…」
掠れた声は、言葉になっているのか。
いつから僕は実験体となっていた?
いつから彼女達は狙われていた?
それを知らずに愛を求め続けていた自分が、芹霞への想いを殺していた自分が…無性に情けなくなってくる。
頭がぐらんぐらんと揺れてくる。
「我が妹、美咲…を覚えているか、玲」
泣きボクロの未亡人。
10年前から、その後数年関係を持った女性。
忌々しい…思い出。
「彼女がお前の精を運んでくれたおかげで、色々な"実験"は出来ていた。
そしてお前の元"女達"は、最もお前の遺伝子が人として育つ方法を、色々な形にて模索することに"積極的に協力"してくれたのだ。
子宮その他諸々の器官をな。
だがあの女達は…脆弱(ぜいじゃく)過ぎた。
道具を生み出す体とはなりえなかった」
――お前が愛など感じなくても、子供は出来たではないか。
――道具にもならぬ…失敗作だったけどな…。
どくん。
僕には――
子供が居たと…?
コドモガイタ?
正に青天の霹靂(へきれき)だった。
僕にだって人並な夢はある。
好きな人と結婚して、可愛い子供が生まれ…家族皆が笑顔で。
それは僕が幼い頃から夢見ていた理想の家族像。
普通で良いから、幸せな家庭を作りたい。
その相手が芹霞であって欲しいと何度願ったことか。
当主の言葉は虚言だと信じたい。
だけど虚言と思えないひっかかりもあるんだ。
もしも真実というのなら――。
いつの間にか…
生まれていた僕の子供。
"失敗作"として葬られた子供。
どんな苦しみを与えられたのか。
どこまで人外に扱われたのか。
僕以上に与えられた"仕打ち"が、そこにはあったはずで。
その数は1人ではなく。
――因果なことよ、お前こそが"狂い"の元凶か。
ああ、不憫な僕の子供達。
僕のような悲しみを味あわせたくは無かったのに。
僕は守るべき立場であったのに。
非道なのは…紫堂ではなく、何も知らずにいた僕の方。
道具として…実験されていたのは僕だけではなかった。
それは子供と共に、"彼女達"にも。
何処までの恐怖が襲っていたのだろう。
気づかなくてごめんね。
助けて上げられなくてごめんね…。