シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
ああ、これは僕の罪だ。
僕が愛を求めた分だけ…罪は生まれ。
僕の愛は…罪にしかならなくて。
それを知らずに、芹霞の愛だけを求めていた僕は…
ねえ…何処まで愚かで、罪深いんだろう?
ああ――僕はッッ!!!
「苦しかろう…玲殿。しかし此処はそれを乗り越えて、"完成"させねば、犠牲となった者共が報われぬ。何も心配せずとも、後は我らに任せよ」
蛇の声が聞こえてくる。
どくん。
もう――
何を考えて良いか判らない。
どくん。
ただ涙が零れ落ちる。
揺れる。
屋敷が揺れる。
「僕は――…」
見えない。
僕に…道が見えない。
進むべき道も。
戻るべき道も。
何処までも白。
孤独の白。
過去も未来も何もなく。
ねえ…芹霞。
――玲くんが好きです。
僕…。
僕は……。
「"特殊"な巫女の体なら…
今度こそ上手く行く」
くつくつ、くつくつ。
「罪の螺旋は、終焉を迎えられる」
くつくつ、くつくつ。
笑っているのは誰の声?
頭が揺れる。
揺れる。
揺れる。
芹霞…。
芹霞…。
「諦めろ、玲。
お前は所詮…愛などとは無縁なのだ」
僕の滲んだ目に入ったのは…
当主の床の間に飾られていた、奇妙な蛇の置物。
置物の腹には九曜の紋。
「お前が抗するのなら、お前が愛する娘を殺さないといけない。
それは流石に忍びないだろう?
これ以上罪を重ねたくないだろう?」
かつてない程の猫なで声に、
「罪に塗れたお前でもいいと仰られているのだ、皇城当主は。
必要とされて良かったな、玲」
僕は――
「玲!!!?」
置物の前に備えられていた脇刀。
素早くそれを手に取り、漆黒の鞘を引き抜いた。
鋭く煌く銀の光が、狙いを定めて静止する。
「玲、何をするッッ!!!」
驚愕する当主とは対照的に、
雄黄は落ち着いたままで僕を見た。
「我達を殺せるとでも思っているのか」
それは余裕ある静かな口調で。
「僕は…貴方達を傷つける気はない。
気に入らねばすぐ殺す人間ではないッッ!!!
それくらいなら――」
そして逆手に持ち替え、
「僕が…死にます」
毅然とそう言った。