シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


ああ、これは僕の罪だ。


僕が愛を求めた分だけ…罪は生まれ。

僕の愛は…罪にしかならなくて。


それを知らずに、芹霞の愛だけを求めていた僕は…


ねえ…何処まで愚かで、罪深いんだろう?



ああ――僕はッッ!!!


「苦しかろう…玲殿。しかし此処はそれを乗り越えて、"完成"させねば、犠牲となった者共が報われぬ。何も心配せずとも、後は我らに任せよ」


蛇の声が聞こえてくる。


どくん。


もう――

何を考えて良いか判らない。


どくん。


ただ涙が零れ落ちる。



揺れる。


屋敷が揺れる。




「僕は――…」



見えない。


僕に…道が見えない。


進むべき道も。

戻るべき道も。


何処までも白。


孤独の白。



過去も未来も何もなく。



ねえ…芹霞。


――玲くんが好きです。


僕…。



僕は……。



「"特殊"な巫女の体なら…

今度こそ上手く行く」



くつくつ、くつくつ。


「罪の螺旋は、終焉を迎えられる」


くつくつ、くつくつ。


笑っているのは誰の声?



頭が揺れる。


揺れる。


揺れる。



芹霞…。


芹霞…。



「諦めろ、玲。

お前は所詮…愛などとは無縁なのだ」


僕の滲んだ目に入ったのは…

当主の床の間に飾られていた、奇妙な蛇の置物。


置物の腹には九曜の紋。


「お前が抗するのなら、お前が愛する娘を殺さないといけない。

それは流石に忍びないだろう?

これ以上罪を重ねたくないだろう?」


かつてない程の猫なで声に、


「罪に塗れたお前でもいいと仰られているのだ、皇城当主は。

必要とされて良かったな、玲」


僕は――



「玲!!!?」


置物の前に備えられていた脇刀。


素早くそれを手に取り、漆黒の鞘を引き抜いた。


鋭く煌く銀の光が、狙いを定めて静止する。



「玲、何をするッッ!!!」


驚愕する当主とは対照的に、

雄黄は落ち着いたままで僕を見た。


「我達を殺せるとでも思っているのか」


それは余裕ある静かな口調で。



「僕は…貴方達を傷つける気はない。

気に入らねばすぐ殺す人間ではないッッ!!!


それくらいなら――」


そして逆手に持ち替え、



「僕が…死にます」



毅然とそう言った。


< 315 / 1,366 >

この作品をシェア

pagetop