シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
僕の声は届かない。
僕の思いは、覚悟は届かない。
軽んじられ侮られ…
脅しの材料にもならない。
無謀すぎたのか。
それとも――
僕の命など、軽すぎるのだろうか。
その時…大きな気の流れを感じた。
「ああ…紫堂当主の結界力によって、断定は出来ぬが…これだけの気の大きさを持つのは…恐らく周涅だな。我を迎えに来たか」
当主と雄黄と周涅。
3人に、僕の力など及ばないのは判っている。
場は…刻々と絶望的になってくる。
――絶望に喘ぐがいい。
「さあ玲殿。そんな茶番はやめて――…」
くつくつ、くつくつ。
そして雄黄がカッと目を見開くと、
僕の足が――
「儀式を始めよ」
まるで石になったかのように動かなくなった。
金縛り。
反動で前屈みに倒れこみそうになった僕を支えたのは、当主で。
「紫堂当主。"アレ"を。我の術よりは即効性がある」
くつくつ、くつくつ。
雄黄に促された当主は――
懐から取り出した何かを、僕の口に無理やり入れ、僕の顎を上に押し上げた。
吐き出そうとしても、口を押さえられて。
体を揺すぶられて。
「もういいだろう。
もういい少しで…効いてくるはずだ」
満足げに笑う当主の顔が、霞んで見えた。
体全体が…凄く重くなった。
複数の足音がする。
逃げられない。
全て舞台は整っている。
そう隠喩して笑う雄黄の前で、
僕の覚悟の刀は霞んで見えた。
「さあ玲、刀から手を離せ。
薬が抜けたら…
全ては終わっている。
せめてもの慈悲だ」
伝わらない。
嫌だ。
自由を奪われて、愛を奪われて。
僕は道具ではない。
僕の子供も道具ではない。
「この思いが…"茶番"としてしか
受け…て貰え…ないの…なら」
気力を振り絞って、僕はそう言うと――
「僕の本気を…
思い知るがいいッッッ!!!」
腹に…刀を突き刺した。