シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

当主の強力な結界をモノともせず、忍び込んでいたのは…あの黒い薔薇の痣を持つ蛆男だけではなかったのか、それともあの男が何か細工をしたのか、よく判らないけれど。

給仕達がこんな有様になるその"異常さ"を何故私は気づき得なかったのか。


――ねね、あれ…蛆男の蛆!!!? それとも最近よく見掛ける蛆!!?

――う、蛆なんて、どれも一緒だろ!!?


もしも…記憶に新しい、煌しか弾けぬ蛆であるならば、私の裂岩糸は役に立たないけれど、それでも私は芹霞さん達を守らねばならない。

やれないのではなく、やらねばならない。


そう糸を構えた時、クオンが鳴いた。

クオンから吐かれる炎。

その炎が蛆を一掃し始めたのだが、それでも蛆の猛威は凄まじかった。


――わわ、蛆が…屋敷をバリバリ…。

――ねえ、こっちというより…あっちに行ってない? あっちは一体…。


芹霞さんが指差す"あっち"。

そこに新たな気配が生じていることに気づいた。

それは私が過去見知ったことがあり、出来ればもう相対したくはなかった…


――周涅!!!?

――何で七瀬の兄貴が此処にいるんだい!!


七瀬周涅。



――なんだろう、周涅が舌打ちしてあっち見たの。

――ああ、あっちからも誰か来るよ、神崎~!! 敵か、また敵!!?



そんな時――

現われたのが麓村朱貴だった。


あの…上岐物産の地下で別れた後、朱貴がどんな扱いを受けてどのような立場になったのか知る術はないけれど、纏う色が異質過ぎた。


熾烈な…赤色の外套。

そして此の世で1つしかない…赤い蓮のバッチ。


それは紅皇の証だ。


緋狭様は死んでいないのに、何故朱貴がこの姿で堂々と出現出来るのか。


――ぬおおおお!!!? 何故朱貴があね…じゃなく紅皇の姿!!?


――えええ!!? 朱貴が紅皇サンなの!!? じゃあ神と呼ばれる偉い紅皇サンは…女の人じゃなくて、女みたいに綺麗な朱貴だったんだね!!? それならそうと早く言ってよ、除け者にしないでさ~!!!


――ぶっ、神崎~。君は順応早すぎるっ…って言っても聞いてないし!! マイワールドどっぷりつかってるし!! ボクの声を聞け~ッッ!!!


――ふふふ、よかった~。これであたしも皆と一緒に、紅皇サンの顔を拝見することが出来た~。よし、これから朱貴は紅皇サンって呼ぼう。失礼ないようにしなきゃ。ふふふふ。


ごめんなさい、芹霞さん。


嬉しそうな処申し訳ありませんが、今の状況…訂正する余裕は全くないんです。


朱貴が…敵か味方か。

今は、警戒して見極めねば!!!

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