シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
――ふうん? 朱ちゃん、それ…誰の入れ知恵?
嘲るように薄く笑う周涅は、問い質しながらも…理由が判っているらしかった。
――周涅。俺がこの姿で、此処に居る意味が…判るな?
朱貴は…周涅と対峙した。
ということは…
私達の敵ではない。
朱貴は…やはり朱貴で。
七瀬紫茉を守る為に現われたのだと、私は直感した。
私達の敵ではない。
だとすれば…何故に紅皇の姿に?
もしかして、紫堂に乗り込む為か?
確かに、紫堂本家では…五皇であれば、更に紫堂に縁ある紅皇であれば、自由に歩けるだろうが…だとすれば朱貴はずっと紫堂に居たのか?
いつから?
――させないよ、朱ちゃん。そんな格好は意味ないよ。まだ判ってないようだね、まだ懲りないようだね。もっともっと痛いことしてあげようか?
多分…拷問を受けたのだ、朱貴は。
首筋にある…痛々しい爛れた痕が服に隠しきれていない。
――ニャア。
クオンの鳴声で、2人がぶつかった。
周涅と朱貴の交戦。
早い。
これは…まるで緋狭様と氷皇のぶつかり合いを見ているかのようだ。
朱貴は此処まで凄かったのか。
周涅は此処まで凄かったのか。
五皇レベルだ。
私や煌では…相手すら務まれなかったのか。
悔しい…。
――ニャオ~~ン。
クオンの声が掠れて、弱々しいものとなってきた。
少し辛そうに…頭を左右に揺らしている。
そんな時だった。
――おい、見ろよ、あれは!!!
――今頃…ノコノコと…!!!
後方より現われたのは…
――久涅。
悠々たる様で闊歩してくると…蛆が引いていき、消えて行ったんだ。
久涅の…無効の力のせいか。
私は助けられたなど思わない。
この男が、この男が!!!
櫂様の居る"約束の地(カナン)"を!!!