シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
全員…数にして三十名程。
童顔の副団長の姿はないが…彼らの表情は異常なほど乏しいというのに、目は血走ったかのように真っ赤に充血して瞳孔も開き…そして流れ落ちる汗は尋常ではない。
何だ、この興奮したような様は!!?
何処か操られているのか、弄くられているのか!!!?
何にせよ、何故…団長代理を務める副団長がいないんだ?
彼らは、奇声を上げて襲い掛かってきた。
芹霞さんを標的に。
私は裂岩糸を飛ばして警護団員を弾き、芹霞さんの盾となる。
「お前達、何をしているんだ!!?」
私に返るものは、戦意。
そして殺気。
口から涎を垂らす者もいて、ふらふらとしているようにも見えるのに、その動きはいつも以上に機敏で強靭で…私に向けてくる攻撃性が半端ではなく。
何か薬でも盛られたのか…?
糸と体術でかわして凌げど…全員が全員、恐れもなく迷いもなく、畳み掛けるように襲い掛かってくる。
私は――
団員の1人が、耳から血を流している事に気づいた。
何かが耳の穴に突き刺さっている。
それを抜いてみれば…
「――針」
これは…あの黒い薔薇の男が持っていたのと同一か!!?
周りを見渡せば、皆…耳から血を流している気がする。
この長さなら、脳にまで到達しているのか?
原因はこれか!!?
それでも動けるのか!!?
おかしい。
これはおかしい。
そして彼らのこの…異常な怪力さ。
ドーピング、か?
一方では――
周涅対朱貴とクオン。
こちらには――
警護団対私達。
久涅は――
居ない!!!?
何処に行った!!?
芹霞さんも居る、遠坂由香も居る。
久涅だけが忽然と消えていて。
ああ、あんな男どうでもいい。
私は…かつての部下の手から、芹霞さんを守るだけ。
――あれは!!!
芹霞さんと遠坂由香が叫んだ。
今度は何だ!!?
2人の視線の先に見えたのは…
巨漢、藤百合絵。
その表情はいつもの如く…肉に隠れて無表情なれど。
荒ぶっている…気がした。
服装や髪もそうだが…何より感情が。
「団長に、何するかああああ!!!!」
そして彼女は飛んで来たのだ。
砲弾の如く。