シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
信じられない程のスピード、敏捷性。
巨漢で弾くのではなく…きちんと警護団の攻撃をよけて、更には手刀や足蹴にて急所を突いている。
怪力には怪力で。
百合絵さんの片手だけでも握力は凄まじかった。
驚くのはそればかりではない。
あの戦闘スタイルは――
警護団のもので。
それに驚愕している私の前で、百合絵さんは…
更には――
外気功まで使い出した。
足だ。
ドスン。
片足から拡がる衝撃波。
それは氷皇のものとは比較にはならないけれど…確実に、外気功。
外気功など…素人が簡単に使える程生優しいものではなく、だからこそ、警護団の入団時の必須条件になる。
だとすれぱ――
紫堂の警護団員…だったのか、彼女は。
給仕ではなく?
――ん…百合絵さんはワケありみたいで、…面白い人だよ?
以前、苦笑された玲様が言葉を濁していたことを思い出す。
玲様、玲様は…知っていたのですか?
桜は…夢を見ているのでしょうか。
それと同じことを呟いたのは、目が点となり…口を大きく開いたままの、芹霞さんと遠坂由香。
3人揃って夢を見ているなんて…ありえないけれど。
ありえない事態が起こっている。
結局…唖然としている私達の前で、百合絵さんは1人で…警護団を叩き潰したんだ。
全滅。
それだけではなく、そのままの勢いで、周涅の相手に参戦したんだ。
周涅対朱貴とクオンと百合絵さん。
周涅の強さは半端無いけれど、動きが微かにぶれているように思えた。
クオンが噛み付いた首の傷か?
首の…筋か何かを痛めたのかもしれない。
まだ血も止っていないようだ。
そんな周涅事情構わず、白猫が飛ぶ、朱が飛ぶ、巨漢が飛ぶ。
ああ…なんてファンタジー。