シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


その時――

玲様が脇差しを手にされた。


玲様は…強攻に出られたのだ。

ああ、玲様の命こそが、玲様自身の切り札だったのか。

しかしこれはあくまで、情がある人間達に有効な手段。

玲様は捨て身になってまで、拒まれていた。


当主は…そんな玲様の覚悟を笑い飛ばした。

雄黄と共に。


出来るはずがない。

お前は軟弱で腰抜けだから。

ただの道具なのだから。


そんな言葉さえ聞こえてきそうな…蔑んだ笑い。


芹霞さんを残して逝くはずがない。


それは痛いくらいの鋭い指摘だった。

玲様は…生きたがっている。


それを…嘲笑った。

それを利用して、"ただ1度"…今を捨てることによる、希望に満ちた未来を強調して。


今。変わろうと、強くなろうとしている玲様だから。

未来ではなく、今…芹霞さんと始めたがっている玲様だから。

もう裏切りたくないと…何度も言っていた玲様だから。


だから――

危険な予感がしたんだ。


私が飛び出るよりも先に、クオンが走った。


同時に…玲様がそれを腹に突き刺したように思えて、私達は固唾を呑んだ。


クオンは――…

刃が腹に突き刺さる寸前の玲様の手を引っ掻いて、反射的に玲様が落とした脇差しを口に咥えると…そのまま、当主に斬りかかったんだ。


一瞬こちらを向き、早く連れ去れと言わんばかりに私達を促して。



そして――

今に至る。



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