シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
酷似している2人の男…は謎めいていて。
何か…ひっかかるが、此処まで趣味悪い青い車の持ち主は、他にいるはずもないから、氷皇は確かに現われたのだろう。
忌々しいが…用意周到で。
「クーラーボックス?」
外は寒い季節だというのに、小さなクーラーボックスが用意されており、開ければそこには…冷えた青いタオルと氷がぎっしり。
"鎮痛剤と抗炎症剤を溶かした氷だよ。
可愛いレイクンにプレゼントしてね☆"
クーラーボックスの蓋に…青い紙が貼られていた。
更には…青い封筒もある。
「………」
封筒は見て見ぬふりをしておこう。
鎮痛剤と抗炎症剤…。
癪だから、有難うとは絶対思わない。
絶対、思わない。
氷を口に含んでみたが、毒ではないようだ。
私の舌は異常は感じない。
偽りではなさそうだ。
あれ程毒味三昧…のような真似事をしていたクオンは、まるで見向きもせずすやすやと眠っている。
芹霞さん以外には…まるで興味がないのだろうか。
ますますもって久遠じみていると思いながら、私は冷えたタオルを玲様の膨れ上がった赤い頬に当て、細かく砕いた氷を玲様の口に…。
「さ、さささ桜ちゃん!!! あたしがやるから!!! 責任もってあたしが玲くんの看病するから!!」
またもや芹霞さん大量の汗。
そして芹霞さんは、1.5倍速の早さで私の手からタオルと氷を奪い取ると、私達に背を向けて見えないような形で、玲様の頬を手当てを始めたようだ。
「ふむふむ。神崎にも…"彼女"の意識というものと独占欲というものが出たのかな? よかったね~師匠~。耐えた甲斐あったね~」
遠坂由香は喜んでいるけれど。
「何処かな…何処の部分なんだろ…」
手当て…しているんですよね、芹霞さん…。
「ごめんね、玲くん。絶対…くっつけるからね…」
此処からでは、彼女がどのような手当をしているのかよく見えない。
ただぼそぼそと、嘆きのような焦りのような…よく意味が判らない言葉が聞こえたのみだった。