シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「なあ…遠坂。クマが運んできた、お前の"大切な銀の袋"だけどよ。何で前より膨れてるんだよ」

「ああ、忘れる処だった。ありがとう、如月。別れ際蓮から紫堂に渡してくれって言われてたんだ。何だかは判らないけど…流石は久遠様だとか…久遠様はやらぬだけなんだとか…だから持って行けとか何とか…」


がさごそがさごそ…。


「ああ、これだ!!! 

何だろ、この山」


遠坂はA4サイズのかなりの厚さの紙の束を、黒い革紐で十字に結んだものを取出した。


「お前の袋…何出て来るよ、いつも…」

煌が興味津々と銀の袋を覗き込んでいるその横で、遠坂が紐を解いて紙を捲(めく)る。



「……!!

………!!!

………!!!!」



遠坂の目と口が…3段階かけて…大きくなった。



「すごいや、紫堂!!! 見て見なよ!!! 

久遠が、久遠が!!!」


興奮に、鼻の穴まで大きくなっている気がする。


「これ、レグのラテン語!!!

久遠が、ちゃんと完読して…

赤字で大事な処にチェックまで入れてるよ!!

更に!!!

№まで打って…順番にしてくれてる!!」


――馬鹿か、お前。



「うわわっ…あの久遠が此処まで!!?

あの面倒臭がり気まぐれ久遠がしたのか、全部!!!?

何!!!? 天変地異!!?

――だから!!!? 

"約束の地(カナン)"が爆発したのは!!!」


誰もが…大げさだと否定もしない、あまりに奇跡的過ぎる事象。


だが――

俺はあえて心で言ってやる。


ひと言ふた言、物申してやる。



久遠…。


――お前がやればいいだろ? そんな面倒なこと。


出来るなら…


何故とっととやらない?


何故…必要に迫られないと動かない?


芹霞相手なら、瞬時に動く癖に!!


才能の…持ち腐れだろうが!!!


「なあ櫂。久遠ってさ…究極美形だし、強いし、お前まで蘇らせる程だし。"あの域"に到達してるし、金持ち坊ちゃんだし。その上これ全部…あんな短期間で読んでしまう程頭がいいならさ…もしや敵無し?」

「……。性格に大問題ありだ!!!」


やはり久遠は…

苛立つから、俺の視界の外に居て貰いたい。


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