シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
玲くんは過去、付き合った女性と身体の関係がある。
別にそれは前々から判っていたことだし、常日頃玲くんは沈黙を守っていただけに、彼女サンとのことがいつも興味津々だったことは確か。
他人事のように思えていたのは、玲くんはあたしに対してそういう対象に見ていないと思っていたからで、それは付き合ったからといってすぐ変わるものでもないと思うんだ。
あたしは子供のように甘やかされて大事にはされているけれど、大人の…"女"として扱われていないことは判っている。
あたしと玲くんは対等ではない。
あたしは今まで通り、玲くんの庇護下にいる恋人だ。
付き合うことによって今までとは違う、何かの化学反応が新たに起きるとすれば、それは今までに持ち得ない"意識"が影響するように思えて。
玲くんに"女"として求められることで更に付き合いが深まるというのなら、あたしは現状、玲くんに線を引かれていることになる。
玲くんは彼女サン達には"女"を求めた。
だけどあたしには無縁のような気がする。
見てくれようとしているのは判るけれど、求められるのとはまた別の話。
耳に入る当主の言葉に憤る反面…ぼんやりと思っていた。
あたしの知らない玲くんを、彼女サン達は知っていたんだろうか。
これだけあたしはべったり玲くんを慕っているのに、それでも彼女サン達の方が、玲くんをよく知るのだろうか。
それは…悔しい。
だけど、それは言っちゃいけない。
玲くんに"女"として扱われた彼女サン達は玲くんに対する独占欲を強め、玲くんの愛を確かめようとして別れを告げた。
そして玲くんは…優しい笑みを残してあっさりと背を向けた。
過剰過ぎる独占欲は、愛そのものを滅ぼすものになるんだろう。
だったらあたしは――
――お前は、俺が欲しくないのか?
終わってしまうくらいならあたしは――
――もっと、貪欲になれ。
そんな時、玲くんが豹変した。