シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
玲くんが死んで誰が喜ぶか。
あたしは玲くんを死なせたくはない。
何の為にあたしがいるんだ!!!
玲くんを嫌いになんかなるものか!!
玲くんを助ける為に全力を!!
その結果、玲くんのお顔は下膨れ。
更には歯っ欠け王子様。
ごめんなさい、ごめんなさい。
叩きすぎてごめんなさい。
ここは玲くんが嫌がってもほっぺを冷やして、欠けた歯を修復せねばならない。
あたしはベッドに馬乗りになって、玲くんのお口に指を差し込み…少しずつ唇を開いていき、その口の中を覗き込んだ。
真っ暗で何も見えない。
「……はっ…ぁ…」
玲くん…お口開けているだけなのに、なんでそんな熱くて甘い声を漏らすのでしょう。
やけにドキドキしてきちゃうじゃないか。
長い睫毛がぷるぷる揺れる。
なんて綺麗な眠り王子。
だけどほっぺは下膨れ。
色気満載で薔薇の花背負っているというのに…
だけどほっぺはぷっくぷく。
「…これは一刻も早く、玲くんの歯を修復せねば。膨れたものも萎(しぼ)まないかもしれない」
玲くんの歯…。
玲くんの欠けた歯…。
とりあえず前歯は大丈夫らしい。
それだけでもほっとする。
では奥歯か?
何処だ?
"アレ"でくっつけないといけない歯は何処にある?
「……ん?」
なにやら視線を感じて、目線を上に向ければ。
透き通るように綺麗な鳶色の瞳。
あたしをじっと見つめている。
「ああ、玲くん…気がついたんだ」
反応が鈍い。
まだ夢をさまよっているのだろうか。
玲くんに寝てて貰わないと、穏便に処理できない。
「ゆっくり寝ててね?」
そうにっこり笑うと、玲くんは返事のように静かに目を閉じた。
王子様は再び眠りに入る。
あたしは自分の汗を拭いながら、更に一層口を覗き込む。