シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
あくまで…夢の世界の住人にしたいらしいあたしの存在。
あたしの心は、やけに落ち着いていた。
そりゃあ聞いた瞬間は…玲くんの彼女サン達の間に子供が居たという事実だけでも、かなり驚愕もので、決して嬉しい気分にはならなかった。
彼女サン達と体の関係があったという玲くんの過去の恋愛事情が、リアルに展開されているようで…その中には弾かれたようにあたしは居なくて…"あたしって玲くんの何?"と、疎外感を感じたのは事実。
だけど、玲くんは倫に外れたことをしたわけではない。
正式の恋人と、当然の身体の関係があっただけ。
それが…悪い道に利用されてしまった。
玲くんの知らない処で。
泣きたいのはあたしじゃない。
どう考えても玲くんだ。
玲くんは…そんな仕打ちをされる人じゃない。
幾ら考えても、玲くんは…あたしのよく知る優しい玲くんでしかなくて。
完全被害者でしかなくて。
そう思ったら…あたし、玲くんを虐げるものに対しての怒りしか湧いてこなくなってしまった。
当主は無論、彼女サン達にも。
あたしには…彼女サン達が、被害者とは思えなかった。
可哀相だと…思えなかった。
だからあたしには、玲くんを"非情"とか"最低"とか"気持ち悪い"とか、そういう詰る気分にはまるでならない。
彼女サン達の行く末は、自業自得の結果だとさえ思ってしまう点では、あたしの方が"非情"で"最低"だ。
だから――
「玲くんを軽蔑なんてしないよ。
玲くん…正直、あたしは、彼女サン達に同情すらできないんだ。
元々あたし言ってたでしょう。本当の玲くんをどうして見て上げなかったのかって。見て上げられていたら、別れる事態にもならないだろうし、何より非道な当主に協力なんて出来ないよ。
あたしなら好きな人との子供を、好きな人を縛る道具になんて使いたくない。ましてや…好きな人の子供を、邪道な方法で身籠もるなんて…意味判らない。
あたしなら…玲くんを縛るより、自由にしてあげたい。我慢する顔ではなく、喜ぶ顔が見たいよ。
幸せにしてあげたいと思うのに」
真剣さを判って貰いたいと玲くんの顔を覗き込もうとしたら、何かを頭突きした。
「うっ……」
玲くんから漏れた痛そうな声。
頬だったらしい。
あうう…なんて事を。