シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「紫堂、これどうする? 今読むには結構な量あるけれど…」
俺は言った。
「半分を俺に。
半分を――玲に」
「師匠に?」
「ああ。玲は玲で手一杯かも知れない。だが、今は離れていても…必ず助けに行く。その時までに読んで、俺に説明してくれと付け加えてくれ。宿題だと」
「紫堂…」
「玲は…紫堂によってより追い詰められる。もしかすると…芹霞の存在を利用され脅されるかも知れない。
そんな時、俺がいないのは口惜しい。だが今の俺では、玲を救い出す力がないんだ。ただ奪って逃げるだけしか出来ない。それならば…何れ玲は、その身を引き替えにして、俺を救おうとする。
それでは駄目だ。
解決にならない。
死んだ人間には、死んだ人間なりに…闇から玲を救い出す方法があるはずなんだ。それを探す為にも、裏世界に行かねばならない。
5日などかけない。
俺は強くなって、必ず玲を取り戻しに行く。
それまで…
玲も耐えて強くなれと、伝えてくれ」
俺達の道は、違えさせない。
俺から離れるな、玲。
玲。
また…俺の目を真っ直ぐに見るんだ。
そらすな。
堂々としていろ。
久涅の出生のビデオ。
あれを見た時…
俺ではなく、玲がどう考えているのか知りたかった。
自分の父親が、義妹…俺の母親とできて、子供を作っていた。
その事実が…玲を苦しめるのではないかと。
しかし玲は、俺のことを心配するだけで…自分の心は見せなかった。
他人の関係じゃないんだ、俺達は。
もっと心を見せ合える関係だろ、俺達は。
従兄弟よりも濃い関係にあるかもしれなくなった中、玲の心が遠ざかっている気がして、そのことに俺は苛立った。
――お前はどう思ってるんだ!!!?
だけどそれは玲に通ずることなく…
玲は唯、思い詰めた…壊れそうな顔をしたまま、芹霞の記憶を戻そうとした。
戻すことで、俺の心を…癒そうとしたんだ。
自らの心を隠蔽したまま。
――紫堂櫂は存在していなかった。
――君が愛したのは、紫堂玲だ。
その言葉に縛られていたのは、
芹霞ではなく玲の方だと判った。
――さっき、初めて会ったんだけど?
そんな芹霞の言葉に、頭を鈍器で思い切り殴られたような衝撃を受けた俺は、それと同時に…不安になっていたんだ。
芹霞の記憶が戻らず…その場で泣き崩れた玲は、罪悪感故に俺の元に帰ってこないんじゃないかと。
玲が…二度と俺の前に現われない気がして。