シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「離れないよ…。
あたしは…玲くんの傍に居るからね。
って…何度も何度も言っているんだから、信じてよ」
あたしがそう言うと…
「……っ」
一瞬苦しげに目を閉じた玲くんが、そのまま仰け反るようにして、あたしに咽喉元を見せた直後。
「これが…
夢でなければどんなにかッッ!!」
そう吐き捨てるように言い放つと…さらさらの鳶色の髪を零しながら、顔を斜めに傾けてあたしに口付けようとしたんだ。
その時だった。
ペチン。
玲くんの頬に白いもの。
玲くんの動きが止まり、鳶色の瞳はそちらを向く。
ペチン。
またもや、玲くんの頬に出現した白いもの。
下から伸びた、ふさふさの白い毛。
「………」
バシッッ。
三回目は…力が入ったようで音が変わった。
爪、入った気がする。
「………」
すると玲くんは、
「!!!!!?」
声にならない声を出すと、頬を押さえてベッドに倒れこみ、バタバタと転がった。
あたしはすっとベッドをどけたけれど、あたしがいなくなったのも判らない程もがいている。
多分…痛いんだ。
かなり。
「おい、クオン…」
今の今まで忘れていたその存在。
説教しようとした首のクオンは、"フン"というような大きな鼻息を漏らすと、何事もなかったように再びお休み中。
まるで起きる気配も見せない。
潰されて痛かったのだろうか?
そして玲くんはそのままでお休み中。
痛みに気を失ったのか、元々眠かったのか。
とにかく生きてはいるから安心した。
玲くんは3回の猫パンチにKOされ、下膨れの頬に…小さな爪痕が追加された。