シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「「………」」
無言のまま…呆けたように立ち竦む櫂の前で、俺は一度ドアを閉めた。
そして今度は俺の手で、ドアを開く。
「はろはろ~」
手を振る、胡散臭い青い男と、
「……何だよ」
人間の言葉を話す…
白いふさふさ猫。
正確には…久遠の声。
2人共…青いこたつに入っている。
そしてこたつの上には、焦げ茶色の小さなリス。
カリカリカリカリ、一心に胡桃(くるみ)を囓っていて。
「今、カリカリしてるんだ。あんまり見るなよ、恥ずかしいじゃないか」
顔を上げた下膨れのリスからは…玲の声。
変わらねえ…。
悪い櫂。
俺…フォロー出来ねえや。
「寒いから、早くドア閉めろよ」
猫の顔した久遠が、こたつに潜りながら言った。
「聞こえてるのか? それとも耳でも遠くなったか? この若年寄」
紅紫色の瞳の猫から…聞こえる久遠の声。
言葉聞いてりゃ久遠だけれど…
だけど…
「何で…猫よ?」
白いふさふさとした毛の猫。
芹霞のド・ストライクな美猫。
…芹霞の頭にあれば、俺のド・ストライクになるふさふさ耳の持ち主。
「どうでもいいだろ、そんなこと」
久遠が欠伸をして、眠そうに言った。
本当にどうでもよさそうだ。
だけど…
「どうでもよくねえだろ、それは!!!」
「煩いなあ、駄犬。大声出したら頬に響くんだよ」
胡桃から口を離した…不機嫌そうな下膨れリス。
頬袋に何か入っているのか。
目がくりりとして可愛い顔している。
長い睫が愛らしい。
芹霞が喜びそうな小動物。
ふわふわとした大きな尻尾がまた、芹霞好みだろう。
「お前…玲だよな。何でリスよ? 何でその頬よ?」
「どうでもいいだろ、そんなこと」
カリカリ、カリカリ。
忙しい歯使いで、胡桃を囓り始めた。
…………。
「どうでもよくねえだろ!!!」
再び突っ込んでしまった俺を、溜息交じりの櫂は片手で制する。
「ニノ。今度の概要を話せ」
冷静だな、櫂は。
お前…今の今まで、ポカンだったぞ?
なんでそんな順応性高いよ?