シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


そして同時に――


「うげっ…何の…匂いだよ、おえっ…」


鼻に漂う、異常な匂い。


「あの"しちゅ~"だ。しかもクサ入りの…うっ…"約束の地(カナン)"で食べたより数倍酷い…」

櫂は、匂いの正体を知っているみたいだけれど…


「作ってるのは…芹霞ちゃんだからね?

"ごちそう"、楽しみにしててね、あはははは~」


櫂が過去食ったらしい"それ"より、匂いが酷いとなれば、

今芹霞は、プラスαで何かを加えているのか?


その時。


「ぴぎゃああああああ」


また、耳を直撃するあの…エイリアンの声。


「お~イキがいいねえ。できあがりが楽しみだ」

氷皇…"イキがいい"って…何だ?

芹霞、エイリアン料理してるのか!!?


イキのいい、エイリアンを捌(さば)いているのか!!?


櫂の顔色は悪く、表情が引き攣ったまま。

口に手をあてて…辛そうだ。


「櫂…大丈…」


声を掛けようとした時だった。


視界が…反転したのは。


突然――

視界から全てのものが消えたんだ。



無。

無。


何処までも無の…

漆黒の闇の世界。


櫂までも忽然と消えてしまって。

だけど…声は聞こえるんだ。


「ニノ、どういうことだ!!?」


驚愕したような櫂の声が響く。

恐らく、櫂も俺と同じ状態なんだろう。


『お答えします、櫂様。ROUND1は、お2人の嗅覚が上昇し、視覚が奪われました。この中で沢山の敵を相手に戦って貰います』


「は!!!? この匂いの中、見えねえのに!!?」


『お答えします、イヌ。そうです。定義(ルール)は生きています。その中で、青い男、猫、リスを敵として攻撃して下さい。

定義(ルール)を再度言います。相手の攻撃を避けるのはいいですが、相手の攻撃に対して防御するとマイナス5点。この家のモノに少しでも傷つけるとマイナス10点の上、ペナルティーを受けます』


「家云々も有効!!? 見えねえのに!!?」


『お答えします、イヌ。有効です。見えないだけで、舞台は、先程まで見えていた、あの配置が基準です。思い出して戦って下さい』


思い出せって簡単に言うけどさ…。
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