シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
一斉に気配が動く。
ゆらりと…揺らめくような動きから、鋭敏な動きに変わり…空気が緊張感を伴った。
来る!!!
あの"うじゃうじゃ"、"わさわさ"の3種があちこちから攻撃してくる!!!
戦闘態勢に入り、気を引き締めた…丁度その時。
「ストップ!!!!」
俺を急停止させたのは、突如割り込んできた…胡散臭い男の声。
それに即時応じたのは俺だけではねえ。
櫂も…相手側も一斉に…まるで魔法で時が停止したかのように、始動する気配をぴたりと止めた。
それだけの威力がある声だった。
今更だが…
氷皇の威圧感というものは、目に見えなくても感じ取れる。
凄まじすぎる威圧感を感じるのは、視覚だけではねえ。
声を放てば聴覚が、触れれば触覚が。
五感全てが、氷皇を只ならぬものと感じ取れる巨大なものだ。
だが、此処に居る青い男は本物ではねえ。
本物に近くても、所詮は複製(レプリカ)だ。
例えどんなに強くても、本物の氷皇の威圧感はこんなもんじゃねえんだ。
いけすかねえ大嫌いな奴だが、その強さだけは尊敬に値する。
伊達に五皇や元老院を名乗っているわけじゃねえ。
強さを求めるものは、相手の強さに敏感になる。
五感の一部が奪われているなら殊更感じ取れるものなんだ。
こいつは…氷皇の贋物だ。
そう判っても、従わざるを得ない威圧感は健在だから、真偽関係なく、ただ腹立たしくて悔しい気持ちになる。
「これから大乱戦始めようかと思ったけれど、ワンワンがやけにクオンクンとレイクンを見くびるから、俺、彼らが可哀相になってきちゃってね~。
だったらさ、最初1回だけ…彼らの力を存分に体感させてあげるよ。クオンクン達、レイクン達もその方がいいだろ?」
「確かに…イヌに馬鹿にされたままでもな」
「ん……。駄犬に虚仮(こけ)にされたままっていうのもね」
…というような声があちこち響く。
台詞は違っても、"イヌ"と"駄犬"の単語は反響する。
イヌ犬煩いな、こいつらは!!!
「あははは~。でしょう? 俺は優しいからね~。だったらまずは15秒交代でお試ししようよ。最初にワンワン達にクオンクン達とレイクン達を攻撃して貰おう。その後15秒クオンクン達だけ、続いてレイクン達だけでワンワン達に攻撃。
全て終わってもワンワンは"楽勝"って言えるかな?
あ、最初は俺、此処から傍観しててあげるよ。だから頑張ってね」