シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
もしも。
もしも緋狭姉がぴんぴんで、いつもの如く一升瓶片手に現れたら。
俺…泣くかも知れねえよ。
わけ判んねえこと口走って、子供みてえに泣きそう。
子供に…退行しちまうよ。
だけど。
「…煌…惑わされるな」
代わりに、固い櫂の声が聞こえた。
「此処に…緋狭さんがいるはずがない。
夢と現実を…区別しろ」
辛辣な…言葉を――。
俺も…芹霞に飛びついた櫂に言ったんだ。
歓喜している幻想の中、辛い現実に返した。
それは…揺れる心は、
この先…足を引っ張るのが判ったから。
強くなるために戦おうとしている今、俺達はぶれちゃ駄目だから。
そうだ…。
俺も…同じだ。
「……さんきゅ」
櫂はみえねえけど…俺は櫂を感じ取れるから。
そして櫂も俺を感じ取れるから。
「俺の台詞だ」
きっと櫂は笑っているだろう。
判るよ、俺と櫂の仲だもんな。
「ちぇっ。カイクンのってくれないや。ぶぅぶぅ」
何だか…こいつ。
アホハットのノリに似てる。
ん?
アホハットが氷皇のノリなのか?
本物様には、本当にいつもいつも、"必然"に神出鬼没してくれるおかげで、散々な目に逢っているんだし。
まあ、欲しくもねえ青いラブレター貰ってるらしい玲程には、被害はあってねえけれど。
俺だって学習能力はある。
偽者氷皇がいい奴なわけねえ。
"あはははは~"言ってる時点で信用おけねえ。
絶対何か企んでいる気がする。
よし、先手必勝だ。
照準を久遠ニャンコか玲リスだけにしよう。
氷皇が絡んで攻撃に出てくる前に、さっさと決着をつければ、後々面倒なことは起らねえ。
氷皇の提案を逆手にとって、利用してやる!!!
仮に避け切れなくて、久遠ニャンコと玲リスから攻撃を食らう羽目になっても、あんな小さい動物の攻撃なんて微々たる物だろ。
氷皇に比べればダメージなどないに等しい。
なんて。
結局俺は――
軽く考えていたのかも知れねえ。
今…思えば。