シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


賞賛され続けた過去がありながら、親父に人格否定され続ける玲。

賞賛され続ける現在がありながら、玲の人格破壊を試みる親父。


その中に居る玲は、きっと俺に繋ぐ道のために堪え忍んでいる。

そして俺の為に、全てを犠牲にしようとしている。


自分にとって最悪の形で、恋を散らせようとした玲。

俺の為に、"責任"をとろうとした玲。


多分、玲の中では――

芹霞に拒絶された自分を、

親父と久涅に大笑いされる覚悟でいたと思う。


屈辱的で惨めに恋を終わらせて、

そして姿を消そうとしていたんじゃないか。


例えその結果があったとして。


馬鹿だよ、お前。

俺が喜ぶはずないじゃないか。


そこまで猛省しているお前に、

俺が"裏切り者"と罵(ののし)ると思うか?


お前のそんな姿を見て、

俺がいい気味だと喜ぶと思うのか?


お前は、芹霞が好きで――

芹霞を守ってきたんだろ?


どうしようもなく、芹霞が好きなんだろう?

お前なりに、手に入れようと頑張ってきたんだろう?


――紫堂櫂を愛してる!!!


そんなお前を、今の芹霞は選んだ。


12年の俺との思い出よりも、玲を選んだ。


それは、現実なんだ。


だとすれば俺は。


俺は敗者として――

またお前に挑戦すればいいだけ。

8年前のように。


お前以上の存在になればいいだけだ。


生きていれば、やり直すチャンスは幾らでもある。

此の世に存在出来る奇跡に感謝しろ。


そう…緋狭さんに諭され、久遠に殴られ…俺自身が納得して結論出せるまでに、時間はかかってしまったけれど。


それは俺もお前も、同じことだろう?


苦しみがある分、希望もあるはずなんだ。

俺達は、生きているのだから。


生きている限り――

自分が納得出来るまで、あがき続けよう。


絶望に逃げるのではなく。

全てを諦めて切り捨てるのではなく。


胸を張って生きていける…

その日が来るまで。



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