シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


『あ~CMの内にさっさと行くぞ。15秒ごとに攻守交替。初めは坊と駄犬からの攻撃。はい』


パスン。

気の抜けた拍手が聞こえた。

叩ける両手…あるなら、偽者には間違いねえや。


緋狭姉の偽者…やる気ねえな…。

CMって…昼ドラ本当に見てるのか?


何てどうでもいいことを考えられるくらい、俺は久遠ニャンコと玲リスの力を見くびっていて。

だから楽勝だと思った。


しかし違うんだ。


「あ!!!? へ!!!? は!!!?」


攻撃が入らねえんだ。


気配は"うじゃうじゃ"。

声だって明らかに存在を示して、煩い程なのに…俺の拳も脚も空を切る。


場の中で、主に感じる素早い気配は久遠ニャンコ。

ニャンコはひらひらと身を翻して移動しているように思えた。


玲リスは足元にいるんだろう。


俺が攻撃に動けば――

チョコチョコと床を小さく移動し、

やがて止ってカリカリ音を出している。


こんな時に、まだカリカリか?

雰囲気的に座って食事してねえか?


本物の玲の立ち食い、見たこともねえ。

あいつは妙にお上品だから。


だったら…遠慮無く…。


「!!!?」


だけど当らねえ。

カリカリ中の玲にも避(よ)けられているらしい。


何でだ!!?

見に見えなくとも、俺は"気"を追えるし、目隠しした修行だってしているはずなのに!!!


当らねえ。

俺、間違った気配を追っているのか?


まるで手応えねえのは、虚しい一人芝居をしているようで。


誰も居ない空間で、俺一人…"形"のお勉強、そんな寂寥感まで覚える。


何処に居るんだ?


俺の攻撃って…小動物以下?

あんなチビ達に軽く避けられてしまうもの?

こんな気配があるのに、1つも攻撃当たらねえの!!?


立て続けに"気配"に狙いをつけて攻撃しているのに…掠りもしねえ。


自信喪失して落胆する直前、


「煌…俺も、攻撃がまるで決まらない」


櫂の悔しそうな声が聞こえた。

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