シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「全てかわされる。氷皇は動いていない。俺達が相手しているのは、戦意のない多くの猫とリスだけだというのに。今がチャンスなのに」
そう、攻撃が一番出来る条件なんだ、今の状況は。
「動かない相手に攻撃が決まらないのなら、動くようになった時…」
『次。攻守交替。
まずはふさふさネコから15秒攻撃。
…ぐびっ』
最後のぐびって何だよ。
しかもぷはって聞こえたような気が…。
「さあ…クオンクン、行っけ~!!!」
氷皇の掛け声と共に――
"気"が動く。
「うわ、うわわわ」
気配だけでかわしていくけれど…
何だこの"気"の忙しい移動は。
数が多すぎなのか?
動きが早すぎるのか?
気配が…逆に掴めねえんだ。
「――っ!!!」
頬に走った痛み。
「ふう…大きいイヌを引っ掻くのは気分いいな」
この声は久遠ニャンコ。
「だったらどっかの大型犬を引っ掻いてこいよ!!! 俺の頬を引っ掻くな!!」
「だから大きいイヌを引っ掻いてるんじゃないか。わざわざこのオレが動いて引っ掻いてやったんだから、感謝しろよ?」
複数のニャンコの冷笑が響く。
ひらひら猫の攻撃をかわしながら、あるいは引っ掻き傷貰いながら…
カッチーンだ。
「お前何様よ!!? チビリスを見てみろよ!!! 足元でチョコチョコ…。飛び跳ねれねえから余計にチョコチョコ可愛らしいじゃねえか!! しかもお行儀よく座ってカリカリだぞ!!? お前何よ、ふんぞり返って乱暴に!!! ちょっと見えねえのを利用して、飛んで引っ掻けられれば"オレ王様"だとか自惚れるんじゃねえぞ!!?」
ぴきっ。
空気が…何故か凍ったような緊張感。
「チョコチョコ…可愛らしい…?」
何か…えげつねえ玲を相手にした感じ、なんだけれど。
『はい、15秒。
次は下膨れリスの15秒攻撃』
くちゃくちゃ…って、酒の肴でも食ってるのか、緋狭姉の偽者。
なんてどうでもいいことを考えている間、玲リスのボルテージは上がっていたらしく。
「僕が…可愛らしい?
飛び跳ねれない?
お行儀よくカリカリ?」
途端に小さな複数の気が、上昇して。
…飛び跳ねたらしい。
飛び跳ねれたらしい。