シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


ダンダンダン。


「この音、神崎家の壁にめり込んでいるはずなのに…相手の攻撃ではペナルティー食らわないんだな。それだけは助かったな。

なあ…それより煌…この匂い、何とかならないかな…。こっちの匂いの方が、俺には辛い。元々酷い匂いなのに、益々酷い匂いになって…」


「確かに…風を切る度に益々臭うな。頭痛くなってくる。台所方向から芹霞の鼻歌聞こえてくるけど…ロクなもの作ってねえぞ?」


エイリアン料理が美味いはずがねえ!!


「煩いな、駄犬!!! まだそんな余裕あるのかッッ!!

食らえ!! えい、えい、えい!!!」


リスだと思って、台詞だけ聞いていれば可愛いのだけれど。


ダンダンダン。


まだまだ続く重い音。


ダンダンダン。


どんな飛び道具を隠してたんだよ、小せえ体してるのに!!


身を翻す度、鼻には凄まじい臭さ。

動けば気持ち悪くて吐きそうだ。


過敏になった嗅覚が…俺の動きを妨げた。


ダンダンダン。


その1つが――


「……やべ」


かわしきれなかった俺の腹に命中したんだ。


「うぐっ…なんちゅー破壊力…」


腹に埋まってから、ポロリと落ちたその凶器を触ったら…

丸い…でこぼこしたもので。


ピンポン球の様な大きさで。


――カリカリ、カリカリ。


玲リスの"お食事"を思い出した俺は…


「お前…これ胡桃(くるみ)じゃねえか!!?

しかも何でこんなに重いんだよ!!? 10kgくらいあるぞ!!!?」


「胡桃なのか、このびゅんびゅん飛んでいるのは!!」


流石の櫂からも上擦った声が聞こえてくる。


「多分そうだ!! って、何処に隠し持ってたよ。はっ!!? 頬か、頬に入れてたのか!!? 10kgの鉄の胡桃を!!? だからお前の頬…そんなにぷっくぷくになってたのか!!?」


「ぷっくぷく…!!!?」


驚愕のように上擦った玲の声は…直ぐ様低い唸り声になり。



ダンダンダンッッ!!!


前よりも強烈な衝撃音。


「な、何怒るんだよ、本当のことじゃねえか!!! それに、お前のぷっくぷくの頬は、可愛いんだから…」


ダンダンダンダンダンッッ!!!


「煌、何も話すな!!! 益々飛ぶ威力が…!!!」

「落ち着け、話せば判る、玲ッッ!!!」


ダンダンダンダンダンッッ!!!


「可愛い可愛い煩いんだよ!!!

僕は男だ!!!


執拗だと――

女にするよ…?」



声が…空気が…

がらりと変わった。

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