シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「!!!!」
股めがけて飛んで来た鉄の胡桃に気づいて、慌てて開脚跳びしてかわした俺だけれど。
下にずれて命中していたら…俺、男じゃなくなってたかも。
ダンダンダンダンダンッッ!!!
バリバリバリ…。
何だ?
バリバリ…?
「煌、電気の力だ!!!」
「あ!!!?」
「これでも食らえッッ!!!」
「タンマタンマッッ!!!」
チビリスのくせに、何すんだよ!!!
「煌、そこから左上に飛べッッ!!!」
櫂の声の通りに飛ぶと…今まで居た場所に、斜め右上から電気の力が走ったような感じがする。
「この駄犬め!!! 逃がさないからなッッッ!!!」
何故俺ばかり…?
ダンダンダンダンダンッッ!!
「お前~、股間ばっか狙うなよ!!!? 卑怯だぞ!!?」
「知るかッッ!!!」
ダンダンダンダンダンッッ!!!
「アカ、アカ、早くアナウンスッッ!!
15秒はもう経っているし、さっきから家が傷つきまくってる」
何だか…早口の胡散臭い小声が聞こえてきた。
「ア~カッッ!!!」
『…ふう。良い気分だったのに。
ああ…判った判った。…ほら、駄犬。そして坊も。壁が崩れそうになっている。2人纏めて、ペナルティーレベル1』
そんな眠そうなアナウンスが入ると、玲リスの動きが止まり、くすくすとした笑い声が聞こえて。
そしてまたあちこちで、カリカリが始まった。
玲…鉄の胡桃食って、歯っ欠けにならねえのか?
リスの考えることはよく判らねえけれど。
その横では櫂が何やらニノに問い質していて。
『お答えします、櫂様。相手からの攻撃によって家が傷ついてもペナルティーとなります。今までアナウンスが入らなかったのは、アナウンス担当がほろ酔い気分でうたた寝をしていたからです。仕方がありません。色つきですから』
緋狭姉…。
正当化していいのか、ニノ…。
『家を傷つけないようにするには、そうした攻撃をさせないか、攻撃を全て受け止めるかのどちらかです』
「受け止める!!? 鉄の胡桃全て、股間で受け止めろっていうのか!!?」
「煌…。別に股間で受け止めろとは…「櫂。お前想像してみろよ、地獄の苦しみだぞ!!!? ホラーだぞ!!? スプラッターだぞ!!? ゾンビなんて可愛いもんだぞ!!?」
俺はぶるぶると身震いした。
櫂からは返事がない代わりに…息を飲む気配がした。
絶対、想像して…引き攣った顔をしているに違いねえ。
これは、男だけがわかる本能的恐怖だ。
「しかも何だよ、ペナルティって。レベル1って何だよ!!?」
嫌な予感しかねえ変な単語を口にした時、闇の中…バタバタと足音がした。