シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「煌…あんた…ウチに何するの!!!?」
芹霞の声が響いたと思ったら。
ドガッ。
「うっ……」
頭に…慣れた頭突き食らった。
よろめいた俺。
「何処から修理費出すのよ!!! あんたの食事から、その分差っ引くからね!!? 食事、当分…生の人参に決定!!!」
人参…。
「はあああああ!!!?」
過去…芹霞の嫌がらせの記憶が蘇り、俺は青くなった。
嫌だ。
嫌だ!!!
寝ても覚めても、あのオレンジの恐怖に怯えたくねえ!!!
あの匂いを嗅ぎたくねえ!!
と思ったのに、
「それでも食ってろ!!」
口の中に突っ込まれた。
人参だ…。
「うえっ」
吐き気してくる。
精神的なダメージ…って、
――これ?
『駄犬ー、マイナス10点』
俺…散々じゃね…?
「櫂はいいからね。悪いのはぜーんぶこのワンコだから」
「はあ!!? 何差別するよ!!?」
「櫂は病み上がりでも頑張ってるんだから。だからあたしは櫂を応援して、早く回復して貰うように…
特別に"しちゅ~"先に味見させて上げる」
それって…エイリアン入りの料理か?
「う…!!!!?」
櫂の…何とも言えぬ、恐怖のような声が聞こえた。
「…俺はもう体力回復したし。腹も減ってないし…」
「櫂。あたしはね、頑張ったの。新鮮な材料も久遠が持って来てくれたしね、さっきから凄くいい匂いしてるでしょう?」
鼻が曲りそうな、胸悪い匂いしかしてねえんだけど。
「ふふふ、じゃーん。もうお皿によそってきたんだ。櫂は見えないからね、あたしがスプーンでお口に入れて上げる」
お前…櫂には優しいよな。
口に人参突っ込む俺とは違うよな?
口尖らせて、人参握りしめた俺だけれど。
けど…ひどい匂いに頭が痛い。
これなら人参の匂いの方がマシかもしれねえ。
「はい、櫂。
"あーーーーん"」
「俺は…いらな「櫂、大好きだよ。ちゃんと食べさせて上げるからね」
"大好きだよ"
うわ…。
この芹霞…確信犯?
…とも言い切れないのが、天然ボケボケ芹霞だし。
それでも…芹霞の愛に餓えた櫂には有効な言葉であったらしく、その動揺が空気に伝わってくる。
俺が妬かなかったのは…
この酷い匂いが櫂に向けられている故に。