シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「俺の参加は15秒ごとにする。最初15秒休んで、次15秒参加して。それを繰り返す。そして休んでいる間は、"異常"の五感…1つだけ変えていくからね。そうだね…視力は戻さない。だからその他の五感が変わっていくから。無くなるか、過剰になるか…」
「ああ!!?」
煌が吼えた。
「だから結局は、30秒ごとに"異常"が変わっていく。簡単に言えば、俺が2つ宣言したら、15秒後に俺は戦闘参加する。流れを途切れさせたくないから、俺の攻撃が終わった時点で、まとめてペナルティー。
判ったね、アカ」
『面倒だ~』
「"ぐうたら"させない、いい案だ、これ。あはははは~」
ふと思う。
視力を…回復させないのは、どんな意味があるのか。
そもそも…このゲームに意味はあるのか。
だが…そんな疑問に答えを見出す時間なく、ゲームは再開した。
「行くよ~。視覚ゼロと…触覚UP!!!」
『…ということだそうだ』
「緋狭姉の偽者…省略するなよ…」
煌のぼやきが聞こえると同時に、悪臭が薄れた。
嗅覚が正常に戻ったのか。
ならばと、自分で手の甲を指の腹で触ってみれば。
「――…っ」
軽く触っただけなのに、灼熱の痛み。
しかも…地に着く足が、ジンジン痛む。
まるで…火傷に水をあてている時のような、そんな痛覚。
この痛覚から逃れる為には、体を何処にも触れさせないようにすればいい。
とりあえずは30秒…。
静かなる気配が、獣特有の獰猛な動きを見せ…気配を悟られまいとする。
多すぎる気配。
縦横無尽に走り回る。
上下左右…斜めから。
気配は敵意を向けてこちらに襲いかかってきて。
必要以上に気を張り詰めさせて、直感を頼りに暗闇で身を翻す。
鋭敏になる聴覚。
リスの胡桃や電気攻撃はなされていない。
飛び跳ね…噛み付くだけになった。
芹霞に体を触られて、気分が落ち着いたのか?
玲の声でなければ、踏み潰してやりたい気分だった。
煌も何とか逃げ切れている。
しかし、逃げるだけでは終わらない。
攻撃しなければ駄目だ。