シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「何だよ…今度は…」
びくついたような煌の声が聞こえる。
バタバタバタ…。
「煌!!! 何度言ったら判るの!!!!
その根性…叩き直してやる!!!」
また芹霞が走ってきたようだ。
「おわ、またお前か!!!
あ…は!!!?」
バシバシバシバシ…。
何の音…だ?
煌の…何かを叩いているのか?
「芹霞、もういいって、嫌な記憶が…ああ…くそっ!!!うわ…おい…あ…」
バシバシバシバシ…。
煌の声が聞こえなくなって。
「煌…大丈夫か?」
心配になって俺が声をかければ。
「緋狭姉――
ごめんなさいッッッ!!!!」
何で…緋狭さん?
『駄犬ー。マイナス10点』
何だか嬉しそうな声だった。
「ううっ…。何か俺まで…玲リスみたいな、ぷっくぷくに…」
「誰がぷっくぷくだって!!!?」
「うお!!? お前いたのか!!?」
「いちゃ悪いのかよ!!!!」
ダンダンダンッッ
「今闘ってねえだろ、落ち着け、また股間狙うな!!!
今狙われたら…掠っただけでも俺の…どうするよ!!!」
「そんなもの無くしてしまえ!!!
何休憩気分なんだよ!!! 僕達は敵だぞ!!!?
僕なんて敵だとも思えない程弱々しく可愛らしいって!!!?
ふざけるな!!!」
「玲…ちょ…待っ…!!!」
ダンダンダンッッ
『駄犬…。またカウントだぞ。
大マケで…ペナルティレベル2のままにしておいてやる』
「アカ~ッッ!!! もう勝手に~」
『黙れアオ。私は気分がいいんだ』
「ワンワン…処処ヘタレMだからなあ…。違うか、アカがドSなのか」
『アオ、ドSはお前だろ』
「いやいや、アカ程じゃないよ、あははははは~」
そんなやり取りの横では。
「煌、また懲りずにお前か~!!!!」
「ひいいいい!!!?」
バシバシバシバシ…。
「僕の芹霞に何させるんだよ!!! 可愛い手が赤く腫れ上がってきてるじゃないか!!」
「俺のほっぺの方を心配しろよ!!?」
「お前はすぐ回復出来るからいいじゃないか、ぷっくぷくにならないし!!!
………。……。何か僕だけ…腹立つなあ…!!!」
「待て、待て!!! 何でお前が怒るよ!!? お前はもういいだろ!!?」
「良くないよ!!!」
ダンダンダンッッ
玲は玲でも…リスなんだよな…。
実物よりも怒りっぽいし、子供っぽいけれど。
煌、悪い…。
玲、悪い…。
俺、笑いたい…。